佐々木洋子の場合 2-1
久しぶりに卓也は洋子がどのように変わっているのを確認するために洋子を再び夜の公園に呼び出した。「卓也 こんな時間に何の用なんだよ」と卓也に文句を言いながら洋子がやってきた。
洋子の外見は今まで通り真面目なままの洋子だが、言葉遣いや目つきは明らかに変わり始めていることを卓也は感じ取った。
「陽子悪いな急に呼び出して」と卓也は言いながら、ポケットから煙草を取り出し口に咥え火を点け、紫煙をゆっくりと吐き出す。
洋子は卓也に煙草の煙を吹きかけられ、「卓也 テメー..... いいもん持ってんじゃねえか よこせよ」と言うと卓也の煙草をひったくるように奪い取り、口に咥えた。
「卓也 じっと見てんじゃねえよ 早く火をつけろよ」卓也はライターに火を点け、洋子の煙草に火を点けたのだった。
大きく紫煙を洋子が吐き出す。卓也は洋子が変わり始めていることを実感したのだった。卓也は洋子を更に堕とす為、祥子に貰ったタスポを洋子に手渡したのだった。洋子はタスポを手に取るとそのまま、ポケットに無造作に入れたのだった。
今日も食事を終えると自分の部屋に入り、鍵をかけると机の引き出しから煙草を取り出し、口に咥えると煙草に火を点けた。「ふー 美味いわ」と言いながら身体の隅々にまでニコチンを行き渡らせるかのように吸うのだった。
ふと洋子は部屋の真ん中に行くと股を開き、そのまま、お尻を点けないように腰を落とし、座りこむ。いわゆるヤンキー座りの姿勢を自然と取り、煙草も人差し指と中指で持っていたのを親指と人差し指に持ち替え煙草を吸い始めた。
口から吐き出していた煙も鼻から出したり、輪を描くように吐き吐き出し始める。鏡に映った自分の姿を見た洋子は今まで自分が大嫌いと思っていた人種になったことを実感し始めていた。
洋子はそんな自分の変化をうれしく思っていた。そして鏡を見ながら見よう見まねでガンを飛ばし始めていた。外見は真面目な容姿のままだが、洋子の性格はもはや以前の洋子ではなかった。
「洋子 まるでヤンキーみたいよ」そう言われてあわてて立ち上がる洋子。今日は友達の藤堂蘭に誘われて一緒に帰り際に電車を待つ駅のホームで洋子は立って待っているのがだらしくなり、思わず座りこんだところを蘭に指摘されたのだった。「あ、ごめんごめん蘭」と言い立ち上がったものの洋子は「うぜーな 自分のしたい様にしてんだからどうでもいいじゃねーか。あー ヤニ吸いてえな」と心の中で思っていた。同時に藤堂蘭の優等生で真面目なところが気に入らなくなり始め、自分と同じ人種に堕してやろうとさえ考え始めていた。