初デート-8
定食屋を出て、彼らは映画館に向かと、
そこも空席が目立っていた。
奈々子が観たかったのは、洋画の恋愛映画。
本当は、幸雄と一緒に観に行きたいな。と思っていた映画だった。
彼女はギュッと目を瞑り、幸雄の事を考えるのをやめた。
しんみりしていては、また彼に気がつかれてしまう。
「奈々子さんが観たいのってこれでいいんだよね?」
彼女がまた“妄想モード”に入っていた時、
すでに彼はチケットを買ってくれていた。
「あ、ごめん。チケット代払う。」
「いいよ、今日は俺が払う。その代り次はおごって。」
「わかった。ありがと。」
そう言って何気なくチケットを受け取ろうとすると、
「じゃあ、またデートしてくれるってことだね。」
さりげなく葵が言う。
「もう・・・本当うまいね、そういう事言うの。」
「奈々子さんにだけね。」
そう言って彼は、繋いでいた手を引き寄せた。
葵の広い胸に、彼女の頭がコツンとぶつかる。
奈々子はもうすでに、自分を制御できる自信はなくなっていた。
彼女の心がますます彼にときめいてしまう。