出会い-13
キスされる！奈々子はそう感づいたが、彼を受け入れてしまった。
拒否することだって出来たのに。
引き寄せられるように青年は奈々子に唇を軽く重ねてきた。
失恋、もとい結婚を断られた直後、奈々子は見ず知らずの若い男とキスをしている。
それはいつもの彼女からは想像できない事だった。
彼女だって、かっこいい男の人は好きだ。
でも彼女は幸雄を裏切って、浮気なんてした事は一度だってなかった。
（私どうしちゃったんだろう？・・・）
今、誰でもいいから自分の傍にいて欲しいだけなのかもしれない。
こんな若い子が自分に一目惚れなんてありえない。
甘いこと言って、エッチしたらすぐ捨てようと思っているに違いないんだ。
頭ではわかっているのに、なぜか奈々子は彼を拒むことができないでいた。
彼女はもう、自分でも自分がわからなくなっていた。
ただ唇を重ねているだけの、長い口づけで奈々子の感情が変わっていく。
次第にもうこのまま酔いに任せるのも悪くないな・・・。
そんな事さえ思うようになってしまっていた。