出会い-11
(何?!痴漢?変質者・・・?!)
ビックリして彼女が顔を上げると、
目の前にいたのは、髪の毛を微かに茶色に染めた男だった。
男というより、大学生くらいの青年で
目鼻立ちがはっきりとしていて、街灯に照らされただけの暗い夜道でも
嫌みのない爽やかな顔立ちがわかる。かっこいい子だな。
と不覚にも奈々子は思ってしまった。
青年も傘を差さずに歩いていた。
奈々子とは反対の、駅の方へ向かうようだった。
なぜか彼も一瞬驚いた顔をしていたが、すぐに真顔に戻った。
「―――お姉さん、大丈夫?」
青年は奈々子がが泣いているのに気がついて、声をかけてきたようだ。
たぶん大学生くらいだろう、こんな年下の子にまで心配されてしまうなんて、
なんて情けない。と奈々子は思った。
「だ、大丈夫よ。・・・だから離して、腕。痛い。」
優しく掴まれた腕は、本当はちっとも痛くなんてなかった。
むしろ優しく触れられて、心地よかった。
「あっ、ごめん!」
青年はパッと手を離したが、奈々子の顔をまじまじと見つめた。
(何なんだろう、この子は?)
奈々子は不安になる、まだ夜中ではないが人通りは少ない。
「何・・・?そんなに人の泣き顔が珍しい?」
「いや、綺麗だなと思って。」
「はっ?」
青年は奈々子を褒めだした。
「こんなに泣き顔が素敵な人は初めて見た。それにすごく色っぽい。」
「な・・何言ってるのよ。そんなに褒めても何も出てこないわよ!」
奈々子がそう言い終わろうとした時、青年は彼女を抱き寄せた。
「お姉さん、涙止まったね。よかった。」