恋-6
「もうお腹は空いてないよね?」
と少し、照明を落としたワインバーに連れてこられて
「で?真子ちゃん何から始めようか?」
と頬杖をついて、私をじっと見つめた。
「えっと・・・」
この人、本当にフラれるなんてことあるの?
急に自分の知識なんか何の役にも立たないように思えて。
「あの。ごめんなさい。私そんなにお付き合いの経験も豊富じゃないです」
「うん?」
「なので、さっきは教えてあげるというようなことを言いましたが
私に教えられることはないか・・・と」
そう言えば少し笑って
「そんなことないよ。一緒にいれば俺の悪いところも気がついて
それを改善すればいいだけの話だ」
「はい」
「もうフラれたくないんだ」
真剣に言う清水さんに、微力ながらお手伝いできれば・・・
そんな風に思ってしまいそうな頬笑みだった。
「私でよければ」
そう言った私に、大きく顔を崩して
「ありがとう」
と笑った顔は、建築営業のやり手営業マンとは違った、プライベートの顔で
たまに食堂や廊下ですれ違うだけの私は
不覚にもドキドキしてしまった。
「清水さん、その笑顔良いです!」
「そう?」
「はい!ドキドキします!」
そう言った私の言葉に、お店に似合わないような大声で笑い出して。
「うん。覚えておくよ」
とグラスを少し高く上げた。