愛しい人-3
それからラウルはティアラを軽々と抱きかかえて、
温かいお湯がはられた浴槽へティアラを浸からせた。
甘い香りの香油を湯に垂らす。
ラウルはゆっくりと丁寧にティアラの髪の毛を洗い、次は彼女の体に触れた。
しかしラウルは、ティアラの体を快感の世界には導こうとしなかった。
ティアラは心の中で、
ラウルを感じたい。彼と一つになりたい。あの忌まわしい記憶を上書きして欲しい。
そう思ってしまった。
そんな彼女の想いとは裏腹に、ラウルはティアラを優しく撫でるだけだった。
(きっと私が他の男に汚されたから・・・
だからラウルはもう私を抱く気にはなれないんだ。)
ティアラはそう考えて、彼女の瞳に涙が溜まっていく。
「どうした?泣くなよ・・・。」
ラウルは困ったような声を出す。
「お前は母親と無事に会えた、もう奴の事は忘れろ。」
(違う・・・。
私が思っているのはそうじゃない。)
彼女は無言で、泣きじゃくりながら首を横に何度も振った。
「何だよ、何が言いたい?」
ラウルはティアラが考えていることがわからずに、イライラした声色になる。
ティアラは彼に向き合った。
震える声で、今までの想いをラウルにぶつけた。