ロイクの企み-3
「この城は、もともとはお前の母親・・・ティエラが住んでいた城だ。」
私は耳を疑った。
「・・・な、何を言っているの・・・?」
「ティエラはお前に何も言っていないのか・・・?」
ロイクは昔を懐かしむように語りだす。
「俺はティエラとこの先の森で初めて会った。
あいつは一人、城を抜け出して、迷子になっていたところを俺が見つけたんだ。
その時から俺は盗賊だった。最初は身なりの良い女だと思って身ぐるみ剥がしてやろう
と近づいた。でもあいつは、無邪気に俺に笑いかけてくる。
野ウサギを追いかけていたら迷子になったとな。
あいつは盗賊なんて見たことないんだろう。俺に興味津々で、話しかけてくる。
最初、俺はあいつが貴族の娘だと思った。
あいつの親から金をとってやろうと思って、貧乏な木こりだと名乗った
。ちょっと泣ける貧乏話なんてしてやったら、
可愛そうにって泣きながら自分の指にはめていた宝石のついた指輪を俺によこした。
これを売ってお金に換えてってな。
あいつはドレスに似合わない象牙でできたペガサスの形をしたペンダントも付けていた。
そっちの方が明らかに他人に渡すにはちょうどいい値打ちだろうに、
あいつは宝石を差し出した。
俺がペンダントを見ていると、これは大事なものだから駄目だと言って隠した。
俺は最初、あいつが金の成る木ぐらいにしか思っていなかった。
でもたった数時間、あいつといただけで、
俺のものにしたいと思うようになってしまった。
あいつも俺に悩み相談なんてしてきた。
いつも閉じ込められてばかりで息が詰まる。だから抜け出してきた。
もうすぐ私は知らない人と結婚させられてしまう。そんなのは嫌だ。
私は誰かと恋に落ちて結婚したい、とか言っていたな。
じゃあ、俺が結婚を阻止してやろうか。そう言ったらあいつも乗り気になったんだ。
俺は本気だった。本気であいつは結婚したくない、そう感じたから行動に出た。