サミュエルの秘密-5
5人の男が彼らを廃墟の城の中へと連れて行った。
城は小さいながらも、見事な作りだった。
きっとこの王国が栄えていたころには、素敵なお城だったんだろうな。と思った。
広間のような所に、一人のがっしりとした体型の、筋肉質な男が立っていた。
威厳が溢れる佇まい、素手でも熊を倒せそうな強そうな男だった。
黒々とした髭が尚更厳格そうに見える。
「サミュエル、久しぶりだな。」
「ロイク・・・」
「一年ぶりか?随分とでかくなったな。最後に会った時はガキの面していたのにな。」
「・・・あれは何処だ?」
「ふん、そう焦るな。」
サミュエルはこのロイクという男に何か盗られたのだろうか・・・?
そう思っていると、ロイクはティアラの方を見た。
ロイクはティアラと目が合ったかと思うと、目を逸らさずに見つめ続ける。
(何・・・?何で私を見ているの・・・?)
不安にそう思っているとロイクはサミュエルに尋ねた。
「この女は誰だ?」
「こいつは、あんたにさらわれた母親を探しにここまで来た。」
「母親・・・?」
ティアラは彼に懇願した。
「お願いします・・・お母さんを返してください!」
しかし彼はなぜかティアラの母親の名前を聞いてきた。
「お前の母親の名は?」
「えっ・・?ティエラです。」
するとロイクは不気味な笑い声を立てながら言った。
「そうか、なるほどな!」
もう一度ロイクは私を見据えるとサミュエルに言った。
「いいぜ、今すぐお前に返してやる。」
そう言ってロイクは自分の胸にしまっていた何かを取り出した。
紐の先端に何かがついている。白っぽい・・・何かを。
まるで馬のように形どられて、薄く縞模様が浮かび上がっていた。
彼女にはそれが見覚えがあった。