待ち人-12
彼らと仲間は身支度を整え、設営した簡易的なテントを畳むと、馬にまたがり出発した。
ティアラは心ここにあらずだった。
サミュエルが何か自分に話しかけていたのに気がつかなかった。
「おい!聞いてんのか?」
耳元で怒鳴られて、我に返る。
「きゃっ!!」
彼女はびっくりして叫んだ。
「いきなり叫ぶなよ!馬だって驚くじゃねえか。」
彼は舌打ちする。
「ごめ・・ごめんなさい。」
「ったく、朝から調子狂うぜ。」
「ごめんなさい。」
「まあいいけどよ。それより、もうすぐ奴らのアジトが近い。これからは徒歩で行く。
半分はここに待機、半分は乗り込む。お前はもちろん俺と一緒に来い。わかったか?」
「はい・・・。」
もうすぐ母親が連れて行かれたとされる盗賊のアジトが近い。
・・・というのに、ティアラの心はそれどころではなかった。
サミュエルがラウルじゃないかと言う事が気になってたまらない。