待ち人-11
(うそ・・・まさか、サミュエルがラウル・・・?
彼が私たちの目の前に現れなかったのだって説明がつく。
盗賊になっていたら、村には帰って来ない。
それに彼も銀髪だったし、瞳の色だって緑色・・・。
でも二人の共通点はそれだけ。
ラウルはこんな目つきじゃなかった。こんなに鋭い目つきじゃなかった。
でもラウルの顔がサミュエルとダブって見える気がする。
あなたはラウルなの・・・?)
ティアラが思わず、彼の額の傷に触ろうと手を伸ばした瞬間、
サミュエルの手が彼女の手を素早く捉える。
鋭い目で睨まれたかと思うと、すぐに彼は手を離した。
「なんだ・・・おまえか・・・。びっくりさせんなよ。」
寝ていても隙がない。
「ごっ、ごめんなさい・・・。」
「いや、構わねえ。もう陽が昇り始めてる。支度しねぇとな。」
彼女は恐る恐る尋ねる。
「あの・・・一つ聞いても良いですか?」
「あ?何だ?」
「その額の傷・・・どうしてついたんですか?」
「・・・これか?」
サミュエルは考え込む。
ティアラはお願い、木が刺さったからと言ってと願っていた。
しかし彼の答えは、
「覚えてねえ、昔の事なんて忘れちまった。」
だった。
ティアラは悲しかった。
もしかしたらラウルだと確信できたかと思ったのに。
期待した分落胆する気持ちは大きかった。