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あるお伽噺
【ファンタジー 官能小説】

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待ち人-10

次の日の朝、ティアラはサミュエルよりも先に目が覚めた。
凌辱されそうになった恐怖で、寝付きも悪かったしほとんど眠れなかった。
太陽が少しずつ昇ってくる。
光がテントの中を照らす。

ふと隣で寝ているサミュエルの顔を見た。
すー、すーっと寝息を立てている。

無防備な寝顔は普通の少年のように見えて、ティアラの心は少し和んだ。

恐くてあまり彼の顔をじっくりと見たことがなかったけども、
前にも少し思ったように、整った顔立ちをしている。
涼しげな切れ長の目元、すっと通った鼻筋、細く尖った顎・・・。

「ん・・・」

と彼が顔を横に向けた瞬間、前髪がはだけて額が露わになった。
ちょうど額の真ん中に、何か傷跡のようなものがあるのが目に入った。
何かに強く引っかかれたような傷・・・

?こんな傷を持っている人を知っている気がする・・・。
ティアラは考える。

額に入った傷、何か強く引っかかれたような傷、深い傷・・・・

ハッと気がつく。
まさか、・・・そんなはずはない。
と首を振る。

額にある傷をもった人物が頭の中に浮かぶ。

彼女の待ち人・・・ラウルだ。

あれは彼が消息を絶つことになる数年前、彼らは山のふもとで遊んでいた。
すると突然、朽ちた木が彼らをめがけて倒れ込んできた。
ラウルはティアラを庇って、大けがをした。
鋭い木の枝が彼の額を抉った。
幸い命に別条はなく、失明の危険性もなかったが、彼の額の傷だけは消えなかった。


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