滅ぼされた村-12
彼女はふと、考え直す。
(・・・お母さん。
そうだ・・・お母さんはまだ生きている・・・。)
彼女は母親の事を考え、無意識で呟いていた。
「お かあ さ ん・・・」
男は聞き返した。
「あぁ?なんだって?」
「おか あさん。 さらわれ た・・・。」
「お前のおふくろがさらわれたって?」
彼女は頷く。
すると男はしゃべりだした。
「・・・・俺らはこの村を襲った盗賊を追っている。
お前のおふくろは多分、奴らのアジトに連れて行かれたんだろう。
どうだ、お前も俺らと一緒に来るか?」
ティアラは男の顔を、今度はしっかりと見つめた。
良く見ると、その男は彼女と同じくらいの年頃の少年だった。
銀髪の、男にしては長い髪の毛を後ろに束ねている。
目を引いたのは、頬にかかるくらいの前髪の隙間から覗く、彼の鋭い目つきだった。
彼女は一瞬、この男をどこかで見たことがあるような気もした。
(お遣いに行った隣町で見かけたことがあったのかな・・・?
それに彼の瞳は、お母さんがいつも身に着けていた翡翠の色によく似た、
緑色をしている。)
彼女は我に返って思い出した。
母親が最後に私に託した翡翠石を・・・。
彼女は握りしめていた手をそっと開く。
(お母さんを助けなきゃ・・・。
今度は私がお母さんを助けなきゃ。)
そう思った。
ふと目をあげると
少年も彼女が手にしている翡翠を覗きこんでいた。
彼は何かを考え込んでいたように見えたが、すぐにそれから視線を逸らした。
「・・・連れて行ってください。私もそこへ連れて行ってください。」
ティアラは覚悟を決めて少年に言った。