それでもあなたに恋をする-2
「母さん・・・・」
「仕方ないよ・・・・この子はこんな運命だったんだよ・・・・」
母はなんとなく二人の会話を聞いていて、自分達の子供が・・・と覚悟したみたいだ・・・・その時、診察室の外から言い争う声が聞こえて来た。
「お前がちゃんとしてないからこうなったんだろ!!」
「あなたこそ、仕事仕事って家の事を省みもしなかったじゃないの!!」
「母親のお前がちゃんと見てれば美月がこんな事にならなかったんだぞ!お前がもっと早く気付いていれば中絶だって出来たんだ!」
「責任を私一人に押し付けないで下さい!御近所の方になんて説明すれば・・・あなたは家にいる事は滅多にないから普通にしてられるんですよ!!」
父はそんな話を聞いて腹がたってきた。世の中にはどんなに望んでも子供が授からない夫婦もあるのにこの人達は・・・・娘の体の事を心配もせずに・・・その時父は気付いた・・・・この赤ちゃんの父親はどうしたんだと・・・・二人の話から想像するに、もしかしたらこの赤ちゃんは望まざる子なのでは・・・・そう想像した時、父に悪魔がささやいた・・・・父は診察室を出ると
「申し訳ありません・・・・産まれた赤ちゃんは・・・・息をしてくれませんでした・・・・」
その時、安心したように笑った二人の顔を父は苦虫を噛み潰したような顔で見つめていた・・・
「そうですか・・・・仕方ないですね・・・・」
そう言って安心したように笑う父親に怒りを感じなからも
「本当に申し訳ありませんでした・・・」
父はそう言って深々と頭を下げた・・・
「あの・・・娘は・・・・」
「娘さんは大丈夫です・・・・」
「そうですか・・・・」
父はその後、美月に死産だった事を伝えた・・・・美月は泣き崩れた・・・・そう・・・・父は死産だった自分の子供と美月の子供とを取り替えたのだった・・・・父はA型母はB型だったのでDNA 検査でもしない限りわからないだろうと考えたそうだ・・・
しかし父は良心の呵責に堪えられず医者という職業を辞めて、その後で診療所は後輩に譲り、医療とは全く違う職業に就いた。
「あなたは美月ちゃんの子供なの・・・・美月ちゃん自身はあなたの事を愛していたと思うけど・・・・美月ちゃんのご両親はあなたの事を産まれて来なければ言いとも言ったの・・・・それは、お母さんにも聞こえた・・・・美月ちゃんの年齢で子育てしていくにはどうしても回りの助けが必要になるの・・・でも・・・美月ちゃんのご両親は・・・・あなたにとってどちらが幸せだったのかはわからないけど・・・・お母さんもお父さんもあなたと親子になれて幸せだったわ・・・・」
「そんな事を急に言われても信じられるわけないだろ!!」
「そうね・・・・だったらこれを読んで・・・・」
母は古い父の日記を僕の前に置いた。その日記をめくると、確かにそれは父の文字だった・・・・日付を見ると後から書いたとは考えられず、日記には確かに父の犯した罪の懺悔の言葉が綴られていた・・・・
「わかってくれた?」
瑞希は母の顔を見つめた・・・・
「なんで今さらこんな事を言うんだよ・・・・美月さんだって知らないんだろ?だったら僕はお母さんとお父さんの子供でいいじやないか!もう知っているのはお母さんだけなんだろう?」
父も祖父母ももうこの世の人でなかったので知っているのは母一人だと思ったからだ・・・・
「そうね・・・・わざわざ伝えなければならない事でないかもしれないわね・・・・でも・・・・あなたには伝えなければいけないと思ったの・・・・」
「美月さんにこの事を・・・・」
「卑怯な言い方かもしれないけど・・・・その判断はあなたに任せるわ!!」
「わかった・・・・僕はお母さんとお父さんの子供だよ・・・・昔も今もそして未来も・・・・」
「ありがとう・・・・瑞希・・・・」
母はそう言って瑞希を抱き締めた・・・・それが母に抱き締められた最後になった・・・・たぶん母は瑞希が美月に恋をしている事に気付いていたんだろう・・・・美月が瑞希を相手にするとは思えない・・・だから美月にフラれて瑞希が悲しい想いをする前に諦めされるために真実を告白したのだろう・・・・瑞希はそう考えた・・・・