〜 国語・討論 〜-1
〜 29番の国語 ・ 討論 〜
『ディベート』。 1つのテーマをめぐり、『そう思う(肯定派)』と『そう思わない(否定派)』にわかれ、事前に調べた主張内容をもとに行う議論のことだ。 国語の授業は座学が中心とはいえ、時にはアクティブ・ラーニングも取り入れられる。 定期的に行われるディベートでは、委員長(=22番)の司会のもと、タイムキーパーや記録係、傍聴役と発表役を交代で演じながら、様々な議論を進めてきた。
テーマ設定は12号教官が行う。
『道端に落ちているゴミを拾うことは、掃除人の仕事という観点から見て、推奨するべきか否か』
『公共交通機関に優先座席を設けるべきか否か』
『模擬試験に採用されない教科の学習に対し、力をいれるべきか否か』
といった、自分の立場をきめづらいテーマや、
『殿方が優秀な理由は、生得的、後天的のいずれか』(答え:両方)
『牝が劣等な理由は、生得的、後天的のいずれか』(答え:両方)
『指導によって生来劣等だった存在が優秀になることは可能か』(答え:殿方なら可能)
といった、答えはわかりきっているだけに、論証が切ないテーマがある。
中には、
『ケツマンコのアクセントは『ケ』におくべきか、それとも特に設定するべきではないか』
『剃毛は礼儀に適っているか、否か』
『肥大しすぎた乳房と存在感の無い乳房、どちらが社会に貢献する可能性をもつか』
といった、学園らしいテーマもある。 こういったテーマを真剣に掘り下げ、ああだこうだと議論していると、話すほどにミジメになる。 幼年学校時代は『乳房』も『ケツマンコ』も、口にすることが憚られる単語だった。そもそも『ケツマンコ』なんていわず、普通に『おしり』で通じていた……。
どんなテーマだったとしても、私たちがテーマに対し異論を申し出るなんて不可能だ。 与えらえたテーマを多角的に見当し、最後には自身の意見として消化する。 そんな50分がディベートの時間だ。
……。
今日の私は『傍聴役』。 『肯定派』や『否定派』と違って、意見をいう役割ではないので、気楽といえば気楽なところがある。 けれど『傍聴役』はディベートの最後で『肯定派』『否定派』に軍配をあげる役割なので、決して気を抜くわけにはいかない。
ディベートは委員長による司会の挨拶で幕をあける。
「本日のテーマは『膣と肛門では、どちらを使用したマスターベーションがより健全か』です。 『膣』派のみなさんは右乳首を、『肛門』派のみなさんは左乳首をつまみ、シコらせてください」
真面目な顔で、それぞれが指示された乳首を、人差し指と親指で挟む。 指を互いに摩擦させ、挟んだ乳首をコリコリする。 司会の22番はといえば、両手で両乳首を下から持ち上げ、寄せてあげて、ユサユサとたゆませながら乳首をシコる。
ディベートの間は、自分の立ち位置をはっきりさせるために乳首を弄り続けるのが決まりだ。
「なお、これより先は『チツマンコ』、『オケツの穴』といった我々に相応しい表現をするようにしてください。 では、チツマンコを主張する、最初の発言者は、起立の上で『立論』をお願いします」
「はい」
1人目がその場に立つ。 乳首を摘まんだ指以外をビッチリと乳房に喰い込ませ、根本から縊るように柔らかい脂肪をしぼり、乳首全体を紅潮させる。 そうやって自分の乳首を強調することで、これから述べる自身の発言を印象づけることができる。 これも1つのテクニックだ。 ディベートの時間を通じてポイントになる要素として、声の大きさや発言の論理度合はもとより、乳首による主張を忘れてはならない。
「チツマンコを用いたマンズリは、自分の指やお道具を用いることで、将来生殖にかかわる部位へ刺激を与えることができます。 人工的に受精した卵を着床させ、出産させていただく場合に備えることに繋がります。 よってチツマンコを用いたマンズリの方が、肛門を用いたマンズリよりも健全であると考えます」
『チツマンコ』という言葉を口にする都度、鷲掴んだ乳房を左右に拡げる。 摘まんだ右乳首をヒクヒク震わせ、左乳首を上下に揺する。 一方顔色はというと、火照ってはいるものの性感を表にださなず冷静さを保っている。 下半身からおまん汁を滴らせ、乳首と乳房を終始こねながらも、真剣に議論に集中するのがディベートの作法だ。