コレクション-5
「恥ずかしい?」
「ちょっと……」
「いい顔してるよ。頬が赤くなって、色っぽい。Cocoちゃん、可愛いね」
「そんな……そんなことないです」
「Cocoちゃんは自分では気づいていないだけで、ホントすごく色っぽくて魅力的な女の子だよ。いつもSNSでやり取りしてて、すごく気配り上手で優しい子だなって思ってたしね。うん、その顔すごくいい。俺を見て。そう、その顔」
ハヤトさんの声が頭の中に広がっていく。
まるで占い師の言葉のよう。
このひと、モテるんだろうなとわたしは思った。
清潔感があって人当たりがいい。話術に長けていて、それがちっとも嫌な感じではない。むしろ不思議とその言葉を信じたくなるような心地良い力強さがある。
「以前、SNSの日記に書いていたよね、元カレに酷いことを言われたって。それがトラウマのようになってるって。そんなの、気にしなくていいんだからね。ただの負け惜しみだよ、そいつのね。Cocoちゃんはもっと自分を解放してあげてもいいんじゃないかな」
「解放?」
「そう。仕事が忙しいのもあると思うけど、最近遠出したり思いっきり騒いだりってしていないんじゃない?」
確かに──そうだった。
つまらない女と元カレに吐き棄てるように言われてから、わたしはそれまで好きで集めていた靴をすべてクローゼットにしまい、夜に友達と出歩くことが少なくなった。そんなものはわたしには似合わない。わたしはつまらない女なのだから……。
友達には仕事が忙しいと理由をつけて断ることが多くなり、次第に休日の昼間にしか会わなくなって行った。
ライブハウスではしゃぐことも、友達の家で飲み明かして雑魚寝をすることもなくなった。
わたしはほんとうにつまらない女だと自分でも思った。
「やっぱりそうなんだね。そんな顔をしてる。まだまだ若いし可愛いのにもったいない。26だよね、今」
わたしはこっくりと頷くと、カメラ越しにハヤトさんを見上げて聞いた。
「自分を解放するのって……どうしたらいいのでしょうか?」
ハヤトさんがそうだね、と言う。
シャッターが落ちる。
ふいに、エキゾチックな雰囲気の香りがした。
「今やりたいことってない? 思いっきり買い物をする、とか。お酒を浴びるように飲む、とかでもいいし。大胆にやることがだいじだと思うんだよね」
「やりたいこと、ですか……」
考え込むわたしに、ハヤトさんが悪戯を思いついた男の子みたいな声で言った。
「一晩中セックスっていうのもありかもね」
「えっ」
「あくまで例えばの話ね。セックスでストレス発散させるひとっていうのもいるじゃん? 男なんか、疲れてるときほどヤりたくなるってやつが多いしね」
「そうなんですね」