星を数えて act.4-3
次の日の朝、早速崇に出くわした。
「おー叶〜」
いつものだらしないシャツにワックスで立たせた髪。いつもの軽めのトーク。
「おはよ」
でも、いつもよりちょっと違うところをあげるなら、それは、私が少し崇に期待してしまっているところ。
だって。
「ちゃんとポッケに入れてんだぜ？」
そうやって、持っててくれたりするから。
期待しちゃうよ。
「じゃ、私走るから」
「はいはい」
いつものコンバースを身につけて、私は駆けた。
横を通りすぎた風は、夏の終わりをちらつかせるような涼しい風だった。
「叶、移動教室行くよー」
「んー」
月子が教室のドアにもたれて私を急かす。
「ぽーっとしてない？叶いいことあったの？」
ごめーん、と荷物を持って駆け寄ると、月子は私にそう訊いてきた。
「ちょっと、ね」
「そっか」
彼女はフワリと笑ってくれた。月子は本当に人の気持ちを察し、感じてくれる。語らずとも理解してくれることは、私には最高の優しさだった。
廊下から見える代わり映えのしない景色を見て歩いていると、突然彼女が私の服を掴んだ。
「あっちの道通ってみない？」
月子が指さした方向は、目的地に行くには遠回りだ。ポケットから携帯を出して時間を見ると、授業開始まであとわずかしかない。
「だめだよ、こっち」
ぱっと前を見ると、崇がいた。他の女の子や男友達とこちらを見て騒いでいる。
「叶」
「いいよ、急ご！」
嫌な予感を抑えて月子の手を引いて小走りで、その集団の横を通りすぎようとした、その時。
聞こえてしまった。
「あの子崇とアパート同じなんでしょ〜妬いちゃうぅー」
「あぁそうだな〜。で、でも全っ然！興味ねぇから！安心しろって〜」
キーンコーン……
「ごめん月子、ダッシュしなくちゃ！」
「うん」
わかってる
あれは私を試して楽しんでるのよ
…わかってるけど
“全っ然！興味ねぇから！”
どうしてそんなあわてて言うの？
聞こえよがしに声大きくして
ねぇ崇
私そんなに強い子じゃないよ…