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恋のMEMORY
【少年/少女 恋愛小説】

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全然平気だから…-1

「祭り…楽しかったな。」
「はいっ!素敵な夜を過ごす事が出来ましたわ。」

朝のHR前。私達は昨夜の縁日について心躍るように語り合っていた。

宣言通り浴衣を纏い、祭囃子が鳴る会場へ溶け込んだ。その浴衣と言うのもお店で買った
ものではなく、顔も見たこともないお爺ちゃんの奥さんつまりお婆ちゃんが昔愛用していたという浴衣を着る事にした。本当はそこらへんの店で買おうと計画していたのだが、浴衣は予想以上に高く、私のポケットマネーでは手も届かず今更アルバイトをしても間に合うわず、何よりお爺ちゃんが着ろ着ろとせがむ物で。

彼を喜ばせたい気持ちもあって、その服を受け取り早速着ようとするも上手く着れず、電話で申し訳なさそうに巴ちゃんを呼び出して、着付けに手を貸してもらい、髪も浴衣用に
アレンジしてくれて。

そして完成した私の浴衣姿に巴ちゃんは「何ダコノ可愛イラシイ物体ハ…♡。」と興奮しだし、お爺ちゃん何て鼻息を荒くして、78歳とは思えないような俊敏な動きでケータイでカメラで撮り出し、恥ずかしいって避難する私の声も遮り連射モードまで使いだして。

後々店の常連客に自慢して見せ回る光景が目に浮かぶ、何かの宣伝のように特大ポスター
で貼られないだけマシだけど。

会場前で30分も前から待っていたという佐伯君、本人は「匂いにつられて早く着ちゃった…。」何て仰っていたけど、後で「アンタとのデートが待ちきれないんだって」と巴
ちゃんが申し。

私の浴衣姿に彼は顔を赤く染め、開いた口が塞がらず、彼どころが周りに居た通行人の方々も吸い取られるようにこちらに視線を向け。

「それにしても凄かったですよねー、射的…あんなに正確に的を当てる何て。」
「いやー、たまたまだよ、君だってフライドポテト詰め放題であんな神業を見せるわ、火に油注ぐようにプチドーナツ詰め放題何て…、末恐ろしくて言えないが。」

そうやってお互い楽しく笑いあって、本当に賑やかで時間も一瞬で過ぎたように素敵な
お祭りだった。

「蓮や巴と動物園やボーリングをして過ごす日々も楽しいけど、君と過ごしたあの祭りは
またそれとは別にとっても楽しかった!」
「佐伯…君。」

私の大好きな彼の太陽のように眩しい笑顔。

人気のない場所で二人で観た花火、その時彼は私にこう言った。

「君を選んで、良かった。」
「えっ?」
「俺にはもう、君しかいないのかも知れない。」
「……。」

誰も居ない、二人っきりの場所が…こんなにもドキドキする何て。

「おっ、そろそろ鳴るな、じゃーな。」

そう言って、元の自分の席に戻る彼。

私達、これからどうなっていくんでしょう…。巴ちゃんはお互い徐々に距離が縮まって
何れかはKiss&HAGU♡…。

ってえぇーーキス!?ハグ!?

私は無意識のうちに彼とのそれを思い描いてしまい、一人で勝手に赤くなって。

全くもうー巴ちゃんったらー、私何かそんなの…、キスだのハグだの酔っぱらって帰って来たお爺ちゃんに迫られたのを除けば経験は全くない。それなのに何故だかドキドキするのは何故だろう。

「朝礼を始める前に、皆さんに紹介したい人が居ます。」

嫌だわ私ってば浮かれて。気を取り直して顔をあげる。

先生の合図と共にやって来た一人のクラスメート。その子が黒板の前で足を止めチョークに自分の名前を書く。

小鳥遊(たかなし)風馬…。と書かれた横に立っている茶髪にパーマの掛かった背が若干低い無邪気で穏やかな顔の少年。

「お父さんのお仕事の都合でこっちに来ました小鳥遊風馬でーす、皆さん仲良くしてくださいね。」

特に非難も歓喜の声を挙げるでもないごく普通の反応なクラスメート達僅かに「可愛い」
と言う声も耳にする。

身に覚えのある顔、すりすり飼い主に甘えるような軽い口調…。

私は彼を知っている。


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