ラブ・アゲインもアリなんです-1
ガラガラと立て付けの悪い引き戸を引いて、暖簾を潜ると、バンダナを頭に巻いて、紺色のTシャツを着た、ちょっと強面の店員が、いらっしゃいませ! と元気に声を張り上げる。
店の中は薄暗く、大きな提灯みたいな丸い照明が何個かあるだけ。
さらには建物が古いことも相まって、陰気臭さはかなりのもので。
きっと地元じゃない人なら、初見でここに入ろうとは思わないはず。
それでもここが息長く営業しているのは、地元の人達に愛されているからなのだろう。
見た目はいかつい兄ちゃんが多いけど、感じのいい接客と、美味い料理。
この店の魅力は、地元の人なら大概わかっていた。
「こちらになります」
そんな強面のお兄ちゃんに、部屋を案内される。
通されたのは、カウンター席やテーブル席よりも奥にあるお座敷。
やはり、同窓会やら町内会やらでこの店を利用する人は多くて、そういう団体客が来た時は、決まってこのお座敷が会場となる。
すでに襖の向こう側では、賑やかな声が聞こえてきている。
みんな、どんな風に変わったのか、胸を踊らせながら、スッと襖を開けた。
「どうもー、取手くんの登場です!」
ツヨシのよく通る声が、お座敷に響く。
お座敷は、先程の薄暗いカウンター・テーブル席とは打って変わって、煌々と蛍光灯が照らす部屋。
あまりの眩しさに目を細めつつ、足を踏み入れると、
「あー、取手くんだあ」
とか、
「おぉ、チャラくなってる!」
とか、
「遅えんだよ、はやく座れ!」
等と、少し大人になった、懐かしい顔が並んでいた。