接近-9
完全に目が動揺している。女にとって嬉しい事を言われたような目だ。紗英は言葉を選ぶかのように慎重に口を開いた。
「じ、じゃあ…、今は少しは興味…持ってくれてるの…?」
不安そうな姿がたまらない。健太郎はサラッと言う。
「だって、いい女になったもん、藤間。」
憎らしい程の爽やかな笑顔だ。下心が大きいだけの爽やかさが出る。そんな健太郎にますます乙女の瞳を見せる紗英。物凄く嬉しい言葉であった。紗英はうっとりする自分を振り払うかのように声を張り上げる。
「も、もぅ…!上手いんだからぁ!!」
顔の赤さは酔いだけのせいではないのは明らかであった。そんな紗英に平然と言う。
「いい女だよ、藤間は。マジ。惚れそうだよ。」
「え…?」
紗英は相当酔っている。しかし一瞬、体内のアルコールが全て消え去ったかのように素に戻った。
「ハハハ!そんなにマジな目で見るなよ。正直に言っただけだろ?」
健太郎は紗英の肩をポンと叩いた。思い返せば紗英へのボディタッチは初めてだったかも知れない。これからくまなく撫で回すつもりでいる紗英の体に触れた健太郎の胸は大いに高まった。
「それはそうとせっかくだから楽しもうよ。緊張してたら酒がうまくなくなるだろ?さ、飲め!」
「う、うん。」
紗英は女としての喜びを胸にしまい、せっかくのいい雰囲気を壊さぬよう、努めて明るく振る舞うようにした。しかし内心は健太郎に心を奪われていた。もし誘われたら今夜きっと抱かれる事を拒まないであろう。そう思っていた。心の隅に健太郎からの誘いを期待する自分の気持ちがある事に気付いていた。それだけ健太郎に心を奪われていたのであった。それからの紗英は健太郎が望むいやらしい話を口にするようになる。
「丹野さんの言う通り、私ね…、毎晩でもしたいぐらいに性欲が強くなってるの…。あ、内緒だよ!?誰にも言わないでね!?」
「言わないよ!そっか。じゃあ今藤間と夜を過ごしたら大変な事になるな!」
「多分ね…。アハハ!」
「藤間は一日最高何回した事ある?」
「3回かなぁ。若い時に。丹野さんは??」
「俺はしたい時にはとことんするタイプだから、一晩中するよ?数えた事はないけど、5、6回はするかな?」
「そんなに!?私だったら死んじゃうよ〜。」
「いやいや、そんか事ないよ。女の体って強いんだ。すればする程に感度増すし、燃えちゃうもんだよ。」
「そ、そうなの…?」
「ああ。」
「そうなんだ…。」
健太郎は紗英を見ながら思う。
(エロ話して濡らしてんだろうなぁ、この女…。)
人妻の下半身事情が溜まらなく気になる健太郎であった。