〜 金曜日・仕草 〜-1
〜 29番の金曜日 ・ 仕草 〜
絶え間ない振動及び本来出入りするべき排泄物とは異なる硬度に苛まれ、私たちは誰もが肛口を充血させていた。 休み時間になって尻振りを止めることが許可されたとはいえ、プラグは抜かせてもらえず、座るにしても立つにしても尻尾を揺らしたままだった。
私はトイレに赴き、便座を跨いで立つと狙いを定めて放尿した。 ドアは開けたままなので、股間から勢いよく迸る黄色い液体も、便座に吸い込まれて跳ねる水しぶきも、ジョロジョロという水音も隠せはしない。 他のトイレでは、クラスメイトや他クラスの生徒が、思わずこっちが顔を赤らめてしまうような恥ずかしい音をまきちらして排泄している。 そのせいか、決しておしっこをしたくないわけではないのに、私の尿意はすぼまってしまった。 他の生徒たちは次々に尿を終え、紙などという貴重品の使用が許されるわけもなく、何度も腰を前後にふって水気をはらっている。 私はといえば、一応尿をしたフリをして、ひとしきり腰をふってからトイレを後にした。
そうして教室に戻ったところで、4限の開始を告げるチャイムが鳴った。
茶色の腕章と制服を纏った先輩が5人。 2号教官曰く、彼女たちは『体育委員』で、生徒の運動や部活を指導する担当という。 先頭にいるカッチリした肩幅の先輩には見覚えがある。 というか、ありすぎだ。 入寮してから4日間、一緒に過ごした副寮長のB29番先輩だった。
第1姿勢で直立する私達の中から、教官は5人を指名すると宣言した。 『犬』としての素質がある、クラスの代表に相応しい5名だとか。 その5人を体育委員が1対1で指導し、その様子をホワイトボードに投影するのが4限目らしい。 教室に残った30名は絶頂直前を維持しながら、教室の内外で選ばれた5人が躾られる様子を、静かに鑑賞するという。
素質なんてあるわけないし、この時間はゆっくり過ごせそうだ――と思った矢先。 13番、15番、21番、22番、29番。 私は耳を疑うも、しわぶき1つない教室では聞き間違えようもない。 教官が告げた5人の最後には、しっかり私の名前があった。
……。
「歩くときは常にマスターの足並みを意識しなさい。 絶対に前に出ず、かといって遅れてもいけない。 マスターに寄りすぎてもいけないし、離れすぎてもいけない。 いい?」
「わ、わん……」
「返事が小さい。 聞こえない」
ビシッ。 容赦ない一本鞭が背中を這う。
聞こえていないなら、どうして返事が小さいかどうかわかるのだろう。 私が逆らえないのをいいことに、好き放題いわれるのが悔しい。 でも、当たり前だけれど、問いただすなんて出来ません。
「わん!」
「声だけじゃなくて、ちゃんとオケツを振りなさい」
「ひっ……わ、わん!」
ビシッ。 今度はお尻の谷間がぶたれた。
慌てて尻尾をパタパタさせる。 あと少しずれていれば肛門の真上だ。 叩かれれば間違いなく悶絶して、変な声をあげるだろう。 そうすれば『人間の言葉』を使うことになり、更なる激しい罰が待っている。 罰と悲鳴の悪循環に陥る前に、先輩の指示に対して従順にならなければ。
「返事は鳴き声と尻尾がセット。 忘れないことよ。 じゃ、ついてきなさい」
「わんっ」
軽くお尻を揺らし、歩き出した先輩の横で手足を這わせる。 膝を浮かせるよう命じられており、お尻を高くもちあげる姿勢で、私はヨタヨタとついていった。