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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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K-5

七瀬は本当に歌が上手い。
自分とはジャンルは全く違う…言わば”聴かせる”歌だ。
こーゆー方が世の中ウケるんだろーなー…と思うが、自分らの音楽は「これがいい!」と思って創ったものであって、否定するようなものじゃない。
ロックなのか、スカパンクなのか、はたまたレゲエ、ポップスなのか、メロコアなのか……。
でも、どれかと言われたらどれでもない。
『Hi wayです!』って答えるかな…。
陽向は七瀬の歌を聴きながら思いを巡らせた。
「次の曲、陽向でしょ?」
曲名が表示された時、七瀬は微笑んだ。
「ちょー陽向っぽいじゃん!」
周りがギャアギャア騒ぐ。
「風間の歌聞きたーい!」
「え?歌うの?これ!」
「アガるー!」
そんな声を浴びながらマイクを握らされる。
そして、一段上がった台に促される。

…やってやろーじゃないの、カラオケだって。

イントロが始まった時、七瀬が昭和な曲の紹介を始める。
『レディース、エンド、ジェントルマン!今宵の楽しいひと時!まだまだ夜はこれから!ヒナタ・カザマによるアップテンポなラインナップ!』
七瀬が曲名を紹介したと同時に歌い出しが流れる。
昔、有名だったロックバンドの超メジャーな曲だ。
カラオケはあまり行かないし、バンド以外ではほとんど歌わない。
声だって、七瀬や楓に比べたらいつも小さい。
でも歌うことが好きだし、このカラオケだって、みんなだって、全部自分のものにしたい。
歌っている時が一番自分らしくいれて、どんな場所だって『自分が一番だ。輝いている』と力をくれる。
周りがヒートアップとは違う何かを発する。
誰が何を囁いているのかもわからないこの空間が好きだ。

曲が終わった後、一瞬沈黙になった。
…あれ、酔っ払ってるから大分音痴だったかな。
そう思ったのも束の間。
「つか、まじやべーんだけど…。こんなにリアルなの聴いたの初めて」
「…え?」
「だって、みんなマネしたりするじゃん?風間はそんなことしねーし、なんか……独特の世界観ある」
「あはは……そーですか?」
見たこともないオジサン……多分、技師さんだと思う…に、潤んだ目で言われて困惑する。
陽向は「ありがとうございます」と言って、近くのソファーに腰を下ろした。
次の曲が始まったので、そそくさと撤退したのだ。
ドスっと力が抜けたように座った隣にいたのは、まさかの瀬戸だった。
「お疲れ」
瀬戸は陽向に液体の入ったグラスを渡した。
それを受け取り、まず匂いを嗅ぐ。
「すげー失礼なんだけど、その対応」
「強いお酒だとやだから…」
「バーカ。普通に水」
口を付けると無味無臭で、喉を迷いなく伝っていく。
サラサラと胃に到達し、陽向はふぅ、と丸いため息をついた。
「やっぱりお前は音楽人だ」
「は?」
「みんなフリーズしてたぞ」
「あー……そんなつまんなかったですか?…そりゃそーですよね、一人で盛り上がっちゃってバカみたい。ライブでもなんでもないのに…」
「ちげーよ」
「……」
「さっき……森田さんが言ってたろ」
森田とは、先程話しかけて来た技師だ。
「お前は人を魅了する力があんだよ。なのに、あんなとこで留まってちゃダメなんだよ」
「あんなとこって…Hi wayのことですか?」
「…そう」
その言葉を聞いた時、氷水のような冷たいものが身体を伝うのを感じた。
そして、心臓が張り裂けそうなくらいに全身に血液を送る。
「だから…」
「…?」
「だから嫌なんです!!!」
陽向は瀬戸の頬を叩いた。
荷物を引っ掴み、部屋から出た。

大っ嫌い。


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