交際-5
「おっ、うちのあたる様じゃないの、どうしたのこんな所で。」
「なっ、何だよその言い方。」
「気にしないで、今流行ってるだけだから。」
「訳わかんねぇよ。」
「私のケータイのロックパスワードも「UTINOATARUSAMA]にしようかなぁ。」
「何か用か?」
「別に、良いじゃないデパートで偶然会って話しかけるくらい、私達は別に。」
「ただの元彼だ…ってか。」
「そうだよ!別に良いじゃないか、ウチノアタルサマ。」
「良くないだろ…、俺らが幾らただ会話してるだけったって、そんなの…お互いにさ。」
俺の彼女は巴の親友でもある柊さん。巴の彼氏は俺の幼馴染である蓮。幾ら昔俺と巴が
付き合って居たからって…、もしも…の事があったら。
「なぁーによぉ、険しい顔してぇー、らしくない。」
「いや、別に…。」
「?」
コイツ、分かってるのか?…いや、分かってる筈だ、そんな事になれば巴の大事にしてる
親友の柊さんがどういう事になるかぐらい…。
きっと俺が慎重過ぎるんだな、うん。
「なーに、買ってるの?」
俺が今、手に持っているドーナツ型のストラップを、ヒョイと覗き込む巴。
「彼女にプレゼント?よっうちのあたる様」
「だから何だよそれ、嬉しいような腹立たしいような…。」
この際だから、元カノであるコイツにもちょっと聞いて見るか。
「なぁ、巴…。」
「んー?」
「俺ってさぁー、なれてるかなぁ?柊さんの彼氏に。」
「は?」
「蓮にも聞いたんだけど、俺って、何か。」
「んなモン知らねーよー!そういう事は自分で考えなさいよー、何他人を頼ってんのさ!
アンタらしくもないっ!」
「巴…。」
「そりゃーあの子を大事に思ってくれるのは嬉しいよ、…まっ若干なよなよしてて頼りないけどね…。」
「……。」
「答え何てさっ!自分で見つけて決めれば良いの!はいっ!何時まで大の男が女の子向けの棚に突っ立ってるつもり!ほらっ買うんでしょ!プレゼントしたいんでしょ!」
「お、おい押すなって…。」
人が手に持ってる商品を強奪し、俺の手の平に念を押すようにバンと乗せ、レジへ背中を押す…、全く。