だって悪魔だもん。-4
第五章
あれから30年近くが過ぎた。チコリーはある青年と恋をし、やがて二人の間にひとりの女の子が産まれた。そしてその子も嫁に行く日がやってきた。
「マリー、彼とは仲良くね!」
「大丈夫よ、お母さん。」
マリーの晴れ着姿に、チコリーもその旦那も満足気だった。
「あ!そうだわ、お母さん。」
マリーがそっとチコリーの耳元でささやいた。
「愛してるわ。」
そういうと、マリーはハネムーンに向かう車に飛び乗った。
「アー…ティ?」
「??…どうしたんだい?チコリー。」
「いえ、なんでもないわ。ちょっとね、昔大好きだった童話の主人公を思い出したの。」
「心の優しい悪魔の話かい?」
「ええ、なんだかね、あのお話の主人公は本当にいたような気がするの。」
「ああ、実は僕もそんな気がするんだ。頼りないけど、元気でいつも僕たちの支えになってくれてた、そんな心の優しい悪魔がこの町に本当にいたような気がするよ。」
高く澄んだ秋空は、あの日のままどこまでもどこまでも続いていた。