第一話-4
「はいは〜い。お待たせしました。皆さん。」
同時に、また別の女性の声が響く。
入ってきたのは、ぴっちりと制服を身体にフィットさせた妙齢の女性。
濃い目の化粧に長い睫毛、鮮やかな真紅のルージュで染まった厚ぼったい唇。
色々な意味で派手さを感じさせる身なりである。
特に纏っている制服は、彼女の肢体にはサイズがキツそうではあるが
それにしても限度を越えたラフな着こなしで
ブラウスは第4ボタン辺りまで外され、胸元が大幅に露出。
下着こそ見えないが、くっきりとした谷間と乳房のラインが丸解りで
ポニーテール女に劣らぬボリュームを備えた巨乳である事が判然としている。
また、タイトなスカートはバスト同様にヒップラインをみっちり食い込んで浮き立たせ
パツンパツンに丸みを帯びたカーブを描いている。
その豊満で重量感のある臀部を左右にぷりぷりと振りながら歩き
女は皆の前に立った。
「こ、この人が講師なわけ……?」
お堅いオフィスレディ、とは正反対のイメージである目の前の女性に
モデル女は唖然としながら思わず疑念の声を漏らす。
「私だけじゃないわよ。他にもお手伝いの方に
来て貰ってるわ。さぁ、皆様、お入り下さいませ。」
出入り口の方へ女が声をかける。すると今度は
複数の人間がゾロゾロと室内に入ってきた。
今の今までは女性しかいなかったこの小会議室だが
このタイミングで入室してきたのは全員が男性。
それも、見た目から皆揃って壮年程度である事が推察できる。
男達は、一様に何やら意味ありげな薄ら笑いを顔に張り付かせており
どこかギラついた目で、新入社員の女達をジロジロと眺めている。
上から下へ、下から上へ。値踏みするように視線をしつこく這わせながら
時折隣合う者達と耳打ちをする。
「……?」
そんな様子に、状況が全く飲み込めず
女達は顔を見合わせて怪訝な表情になった。しばし奇妙な沈黙が漂う。
「さて、それでは早速。皆さんにはセクハラ研修を受けてもらいます。」
沈黙を破って、皆に対して発せられた言葉。
それには、意味を即理解するにはあまりにも不可解な単語が含まれていた。
「は?せ、セクハラ研修?」
モデル女が、奇妙な物言いに対して、つい脊髄反射で言葉を返す。
それに対しての更なる返答は、より信じがたく、異常な言葉であった。
「そうです。皆さんはセクハラ担当。セクハラ枠として、弊社に採用されたのです。」