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冥土の土産
【熟女/人妻 官能小説】

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冥土の土産-9

11.
 2週間も経つと、裕子の話をする者もいなくなった。
 そんなある日、波野裕子の弁護士が、豊を訪ねてきた。
「実は、波野裕子さんの遺産のことで、伺いました。波野さんには法定相続人がいません。それで、遺言書によって、橋爪豊さんが相続人に指定されています。不動産、預貯金などから、未払い金などを差し引いても1億円ほどになりますが、お受け取りいただけますね。こちらに波野さんからの書状が添えられております」

<橋爪豊 先生
生前は色々お世話になりました。
ダンスはとても楽しゅうございました。人生最後のひと時を、有意義に過ごさせて頂いたご恩は、忘れることが出来ません。
取り分け、私の今生のお願いを叶えさせて頂いた事は、何をもってしてもお返しできません。
お陰さまで、冥土の土産を携えて三途の川を渡ることができます。
些少ですが、私の残したものを先生の何かの足しにしていただければ、望外の喜びです。どうぞ、律子様にもよろしくお伝えください。お二人で、何時までもお幸せに。
さようなら
波野裕子>


12.
「夕んべ三つやって、今朝又二つ、合わせて五つ、
 髪は乱れる目はくぼむ
 待合の、奥座敷
 天道さんは黄ばむね
 てなこと言って、また一つ」

 豪華客船、“飛鳥“の特別スイートルームの窓から、鏡のような地中海の水面の向こうに、やや黄ばんだ白い建物が、小高い丘に連なっているのが見える。

 豊は、腕の痺れで目が覚めた。
 ベッドの隣の律子の頭を押して、腕を引き抜いた。
「あら、お目覚め?」
「ウン、腕が痺れた」
「ごめんなさい。すっかりいい気持ちで、寝てしまったわ」

 真っ白な筈のギリシャの白亜の家々が、このところ黄ばんできた。
 昔、会社の出張先の接待宴席で、たまたま同席した営業担当の常務から教わった都都逸が、つい口を突いて出た。
(女は、暢気でいいよなあ)
 
 波野裕子から遺贈を受けた1億円、飲み食いだけで使いきれる金額ではない。
 豊は、裕子の冥土の土産作戦のきっかけを作った菊池律子を、豪華客船の世界一周クルーズに誘った。

 (誰にも気兼ねなく、一日中、いつでも、律子とおマンコが楽しめる)
 ニヤニヤしながら出かけたのはいいが、ダンスの他にとりたてすることもなく、ひたすら律子とベッドで過ごすことになった。

 夜毎に艶かしくなる裕子に対して、豊の男根は勢いを失っていった。
 スカイライン・ガーデンでの、週一回のダンスの後の営みを想って勃起をした男根が懐かしい。

「ねえ、クルーズも一寸飽きてきたねえ、ギリシャが終わったら帰ろうか?」
「そうねえ、私はまだいいけど、先生、お疲れのようだから、そうしましょう」



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