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マリネしたマジックマッシュルーム
【痴漢/痴女 官能小説】

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2.-4

「じゃあ、言いなさい」
 彩希が大人ぶった口調で追い詰めると、
「ん……、そ、その……。こないだバーベキューに行ったとき……榎原さんに、された」
 しどろもどろに康介がゲロった。
 された? 何を!?
 キー。声が出そうになった。そういえばバーベキューのとき、由香里はやたら胸が強調されたTシャツを着て康介の目の遣り場を困らせていた。
「……何、したの?」
「キ、キス……。あ、いや、したんじゃなくて、いきなり、その……水汲みに行ったら、榎原さんがトイレから出てきて……された」
 キス以上を警戒していたが、あの状況でそんなことできるわけではなかった。しかしそれでも許しがたいと思った彩希は、すっくと立ち上がると、
「あのオッパイに騙されちゃだめ!」
 康介に厳しく言った。
「えっ……」
 急にオッパイなどと言われて、どうリアクションしていい分からない康介を置いて、自分の部屋からパーカーを取ると階段を駆け下りて外に出た。背後から母親が何か呼びかけた気がしたが足は止まらず、自転車を全力で漕いで由香里が母親と暮らすアパートへ突撃した。
 由香里の母親がいないことをいい事に、中に入るやいきなり由香里に飛びかかった。由香里は恐ろしい形相でやってきた彩希に驚いたが、「小六に手出してんじゃねぇよ、この淫乱!」と彩希が言葉を選ばず罵って、容赦なく暴力を振るってきたから、由香里もキレて応戦してしまった。部屋の中で大声でキャットファイトが始まったが、止めに入る大人は誰もいなかった。
「このっ……、何であんたにっ――」
 ドタバタと乱闘を続けていたが、彩希が馬乗りになってきて、ヤバいマウント取られた、と防御姿勢を取ろうとした由香里の顔に熱い雫が落ちた。彩希の頬からボロボロと涙が垂れていた。「ちょ……、何?」
「わかんない……」
 由香里の顔面に振り下ろそうとしていた手で顔を覆って彩希は大声で泣き始めた。何故こんなに涙が出てくるのか分からなかった。彩希の戦意は喪失していたが、そこへつけ込むことなく、由香里は起き上がって彩希を慰めた。
 このガチ喧嘩をして以来、彩希と由香里の友情はより堅くなった。その日、由香里に慰められているうち、康介に対して弟の以上の感情があることが明らかになった。秘密を共有すると絆は強まる。彩希自身も気づかなかった感情に「弟なんて間違ってるけどね」と言いつつも、「誰かと真剣に付き合うまではしょうがないか」と由香里は共感を示してくれた。そして、冗談半分に康介とキスをして誠に申し訳なかったと言ってくれた。
 泣きはらした顔で家に帰るなり、康介の部屋のドアを開けた。もう布団に入っていた康介が驚いて起き上がる。
「ユッコ彼氏いるよ」
 この時はいなかったが、そう言っていいといってくれたから、前置きなしにそう告げた。
「……そ、そうなんだ」
 眠りに入ろうとしていた時にいきなりそんなことを言われて戸惑っている康介をさておいて、彩希はベッドに上がると布団の中で伸ばされていた脚へ馬乗りになり、康介の両肩へ手を置いた。「な、なんだよ、姉ちゃん……」
「ね、康ちゃん。ユッコのこと好きになっちゃったの?」
「いや……、そ、そういうわけじゃないよ。……あんなことされたから、こ、困ってただけだよ」
「そっか。じゃ、忘れな? ユッコ、冗談のつもりだったんだって。本当にごめん、って」
「うん……」
「忘れた?」
「う、うん。わ、忘れた……」
「ウソつけ」
 彩希は予備動作ゼロで康介の頭を抱き寄せて唇を押し当てた。乾いている唇を濡らすように意識してはむと本当に柔らかかった。目を見開いたまま震えている康介に長い時間唇を押し当てていた。
「……んはっ」
 いい加減窒息しそうになって息を吐いて離れる。「これで忘れた?」
「な、何すんだよ!」
 康介がゴシゴシと唇を袖で拭うのを見て、
「拭くな! ……でも、ユッコとするよりお姉ちゃんとチューするほうが気持ちよかったでしょ?」
 殊更冗談めかしてベッドを降りて部屋を出た。自分のファーストキスが弟だとは思ってもみなかった。


 三年前にチューしてくれたお姉ちゃんだから、入団テストを受けることを後押ししてくれたのだと思っているに違いない。気づかないわけがなかろう。由香里から「このブラコン」と笑顔で揶揄されながらも、彩希は高校三年間誰とも付き合わずに過ごした。当然見目の良い彩希に言い寄ってくる男の子はいたが、康介のことを思うと皆ゴミに見えた。ゴミに見えるほど、キスして以来、より康介を意識するようになっていた。
 残念なことにそれ以降は何も無かったが、弟にとってもキスは忘れ得ぬ記憶に違いないし意識せずにはいらないはず。バレンタインに姉に対しては特別なお返しをくれていることがその証拠。――真希にも同じ物をあげているようだが、まぁ、微妙なお年頃なので、それは照れ隠しからくるカムフラージュだ。
 弟の夢を後押しした自分は、祖母の遺言をちゃんと守れてるんだろうなと鼻歌を漏らしつつ、バイト帰りの電車を降りて家までの帰路についていると、母親と真希に出遇した。時間的に近所のスーパーへ買い物へ行くところ、真希は荷物持ちを買って出た駄賃にお菓子を買わせようとしているに違いない。


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