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青い涙
【女性向け 官能小説】

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青い涙-2

 大柄のアンティークローズの揺れるミニスカートはお気に入りの一枚。
 ちょっと高かったけど、一目惚れして買ったスカート。
 ウキウキする。電車が早く目的の駅に着けばいいのに。
 小さな鏡をポーチから取り出して前髪を確認する。大きな瞳が自分でもキラキラしているように思えた。


 ライブハウスの熱気やにおいが好き。
 いかつくてちょっと怖そうなお兄さんも、髪色の派手なお姉さんもみんなが高揚した顔をしている。
 隣り合った知らない女の子と肩を抱いてジャンプしたり、メンバーの冗談に笑ったり(ベースのひとが一番話がおもしろい)、夢中でステージのほうへ手を伸ばしたり──ここは日常からは切り離された場所、とても開放的な気持ちになる。

 アンコールも終わり、ドリンクをもらいにバーカウンターのほうへ向かった。

 今日はMCの際にボーカルが突然お悩み相談室を開いて観客からの悩みに答える、なんてコーナーがあっていつもよりメンバーのリラックスした表情も見られたような気がした。
 もちろん演奏も最高だった!
 メンバーと観客全員で合唱したときなんか、ちょっと涙が出ちゃった。
 わたしは満たされた気持ちでアイスティーを受け取った。
 くちをつけた途端、

「あっ──」
「きゃっ」
「わっ、ごめんなさいっ」

 わたしの隣にいた男の子とぶつかって、彼の持っていたドリンクがわたしのブラウスの肩にかかってしまった。

「シミになったらどうしよう、ホントにごめんなさい」

 そう言いながら一生懸命わたしのブラウスをタオルでとんとんと優しく叩くように拭いてくれている。

「ハルー? どうしたの?」
「ぶつかって、アイスコーヒーをかけちゃって」

 ハルと呼ばれた目の前の男の子が、アッシュブラウンのゆるくパーマのかかった髪の女の子に答える。

「あちゃー。大丈夫ですか?」

 アッシュブラウンの女の子の隣のショートヘアの女の子がわたしに声をかけてくれた。

「あ、大丈夫です。すみません」
「ハルってばホントおっちょこちょい。こっちのタオルも貸そうか?」
「いや、たぶん大丈夫。ホントにごめんね」
「いえ、こちらこそすみません」

 わたしよりも頭ふたつ分ほど背の高い男の子。
 同い年くらいかな。
 女の子みたいな、やわらかくて優しい顔立ちをしている。
 ツーブロックの黒髪が、とても清潔そうに思えた。

 幸いシミにもならず、わたしたちはホッとしてドリンクを飲みながらお互いにぺこぺこと謝りあった。

「君、ひとり? 誰か待たせてる?」
「あ、はい、ひとりです。大丈夫です」
「そっか、ホントごめんね。──ライブ、よく来るの?」
「あ、はい。やっぱりライブは特別だなって思って」
「うん、わかる。俺もそう思う。──俺、ハルト。あっちの子たちとはネットで知り合って、いつも一緒にライブに来てる」
「そうなんですね。わたし、まゆりっていいます」

 笑うと目尻がきゅっと下がる。
 子犬みたいだな、なんて思ってしまった。

「大丈夫? ハル、ごめん。あたし明日バイトで朝早いんだ。チヒロと先に帰るね」
「あ、うん。またメールする!」
「はあい。それじゃあね、お疲れさま」

 女の子ふたりがわたしにも手を振ってくれた。
 わたしも笑顔で手を振り返した。
 ライブハウスでは他人との距離が近くなるような気がする。そういうもところも、好き。

「ねえ、よかったらちょっとしゃべらない? 近くに遅くまでやってるカフェがあるから、そこで。好きな曲とか聞きたいな」


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