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青い涙
【女性向け 官能小説】

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青い涙-3

 ハルくんもわたしも同じ曲を好きな曲にあげることが多く、話はとても盛り上がった。
 レモンスカッシュの氷がとけて、からんと音をたてる。

「俺も『螺旋』のジャケット好き。ぴったりだよね。女性画家の絵らしいんだけど、メンバーが気に入って是非ジャケットにって言ったらしいよ」
「そうなんだ。あのちょっと暗めな色合いがいいよね」
「うん。あ、そうだ。今度その画家さんが個展を開くらしいってボーカルがブログに書いてたんだけどさ、一緒に見に行かない?」
「行きたい!」

 ハルくんとメールアドレスと番号を交換する。
 ハルくんのアドレスは、シンプルでとても短かった。

「ありがとう。──って、もうこんな時間! まゆりちゃん、時間大丈夫?」
「あっ……ホントだ、終電やばいかも」
「俺もだ。とりあえず出ようか」

 お会計を済ませて(ハルくんが自分が払うと言って強引にわたしの分まで払ってしまった)慌てて外に出る。
 さすがにこの時間では、外を歩くひとの数もまばらだった。

「アプリで今調べてるんだけど、ちょっと厳しいかも……」
「ホントごめん。タクシー拾う?」

 スマートフォンを片手に駅のほうへ向かって角を曲がった。

「わっ……」

 ハルくんが立ち止まる。
 角を曲がる前とあとではまったく別世界かのように、明るく派手なネオンが眩しい。

「ごめん、こっちを通るべきじゃなかったね」
「ううん、別に構わないよ。平気」
「急ごう」
「ハルくん、たぶんもう終電間に合わないし、タクシーより泊まるほうが安く済むんじゃないかなって思うんだけど」
「え? ……えっ?」
「わたし、どうせ家に帰っても誰もいないし、泊まっても平気」
「えっそうなの? 一人暮らし?」
「そんなようなもの。親、帰って来ないの」
「そうなんだ……」
「ハルくん、行こう」
「えっ、じゃぁ部屋をふたつとる?」
「何言ってんの。一緒に入るの」
「えっ」

 もたもたするハルくんを引っ張って、わたしは新しくて綺麗そうなホテルに入った。
 こういうところに入るのは初めてだと言うハルくんに、いいからついてきてと言ってわたしは適当に部屋を選んでエレベーターに乗り込んだ。
 ハルくんが気まずそうに黙る。
 そんなハルくんがわたしには新鮮に思えた。

「なんか、ごめんね……俺なにもしないからね、ホントにごめんね」
「入ろうって言ったのわたしよ」
「そうだけど、ホントごめん。時間、ちゃんと見ておけばよかった」
「まぁもう過ぎたことだしね。──えっと、こっちかな」

 エレベーターを出て部屋を探す。
 アジアンテイストな間接照明がオシャレだった。

「宿泊は先払いだから、払うね」

 部屋に入って支払機に一万円札を入れる。
 ハルくんが俺が払うよとわたしにお札を渡した。
 じゃあ割り勘にしようと言うと、今度珈琲でもおごってとハルくんが笑って言った。
 こんな場所には似つかわしくない、とても爽やかな笑顔だった。

「わぁ。結構広いんだね」

 ハルくんが部屋を見まわして言った。
 ダークブラウンを主として統一された、落ち着いた雰囲気の広くて清潔そうな部屋。
 このホテルにしてよかった。

 つるつるの床にふかふかのラグ。
 テレビがついていて、このホテルの系列店のコマーシャルが流れていた。

「ハルくん、先にシャワー浴びる?」
「えっ、シャワー?」
「うん。ライブで汗かいたし、寝る前にシャワー浴びたくない?」
「それもそうか。まゆりちゃん、お先にどうぞ」
「ありがとう」


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