淫靡なる楽譜-9
「・・・こうして2人きりでお話できることに、この上なき喜びを覚えております」
「・・・私の為だけに聴かせてくれる曲があるとか・・・・」
先程まで色々考えてはいたものの、いざ2人きりになると緊張してしまい微かに語尾が震えた。
そんなディアナの固い表情を見つつ、詩人は笑いながらリュートの弦にそっと指をかける。
「はい・・・あの壇上から見上げた時、真っ先に目についた一番美しき人に捧げるつもりで用意していた曲でございます・・・・」
遠回しに“美しい"と言われて、ディアナの頬が赤く染まる。
弦の上で詩人の細く長い指が少しずつ動き始める。
つられて弦も振動し、音を出し始めた。
やがてリュートから甘く、滑らかな調べがほとばしり始めるのである。
“〜〜〜♪♪♪〜♭♪〜
〜〜〜 ♭〜♪〜〜♪〜"
広いホール内に響く、柔らかい調べ。
観客は壇上の椅子に座った、ディアナただ一人。
その調べは彼女の5感を支配し、脳内を陶然とさせていく。
その心地よき感覚にディアナの心と体は震えた。
初めてだった、こんな感覚は。
心と身体が反応するのに合わせ、白いドレスの下に隠れた乳房は赤みがかり乳首がピンと立つ。
下半身の秘所が熱を持ち、じんわりと蜜が滲み始めたのがディアナ自身にも分かる。
(ああ・・・身体が火照る・・・こんなのって・・・・・・・)
ディアナの青い瞳もいつしか潤みはじめた。
次第に詩人のリュートの音が大きくなっていく。
曲名は聞いていなかったが、まさしく人間の官能を刺激し波打たせる力を持っていた。
いつしかリュートの調べは終わっていた。
しかし陶酔状態のディアナが現実に戻るまでには時間が必要だった。