淫靡なる楽譜-5
―――ユッサユッサユッサ・・・
“んっ、んっ、くっ、ウッ・・・イク、イク・・・”
―――ギシギシギシ・・・
そしてシフの動きが一瞬ピタリと止まった時、
彼女の身体はブルブルと大きく身震いしつつ、背中を弓なりに大きく反らせながら一瞬動きを止め、
その直後にほとばしった2人の声が、
ディアナの耳の奥に残って離れなくなるのである。
“・・・くゥッ、シフ・・・!!”
“んあああっっっ!!!”
§§§§§§§§§§§§
―――♪〜〜♭♭〜〜〜
(はっ・・・・?!)
苦い思い出からディアナの意識が再び現実に引き戻される。
今まで演奏されてきたものとは一転して趣の違う調べによって。
ホールに響きはじめた物静かなリュートの調べ。その音色は静かな雰囲気を醸し出しつつ、要所要所で何か聞く者の心をぐっと掴む、そんな音色だった。
確かこの奏者が演目の最後になるはず。
気を取り直したディアナは思わず身を乗りだし 壇上を見た。
スポットライトが当たる壇上に1人の人物が椅子に座り、ゆっくりとした手付きでリュートに指を走らせていた。
古めかしい三角帽子をかぶりうつむき加減のため、貴賓席から見下ろす形のディアナには相手の顔はよく見えない。
そうこうするうちに曲は後半に差し掛かる。クライマックスのせいか、音調も激しいものになりつつあった。
観客は耳をこらして、その曲の変化に無言のまま耳をそばだてていた。
ここで不意に奏者の顔が上がり、その顔が観客の目に曝される。
ディアナを含め観客席にいるご婦人方から一斉にため息が漏れた。
顔立ちはキリッとしていて、目鼻はくっきりしている。
眉目秀麗、という言葉がピッタリだろう。
目元にはどこか憂いの感じを漂わせている。
貴公子然、と言った方がいいかもしれない。そんな美男。年もディアナより少し年上という感じがする。