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マリネしたマジックマッシュルーム
【痴漢/痴女 官能小説】

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1.-5

「ふーん」
 彩希は弄っていた髪を胸元にポンと置いて、「わかった。考えとく」
 樹生が眉間を寄せ、
「じゃなくて、今日すぐに別れて――」
「あー、うん、分かってる」
 別離を理解できていないと思われている、と彩希は察知して、呆れた声を漏らす樹生を遮った。そう見えるかもしれないが、そんなにも馬鹿ではない。「考えるのはセフレになるって件。別れるのはいいよ、べつに」
「そうかよ」
 まだ自宅までは少しある。しかし自分から言ったくせに苛立った声を上げた樹生に容赦なく肩を押されて車を降ろされた。


「――ってことで別れちゃった」
 彩希が経緯を説明すると、由香里は深い溜息をついた。表情から失恋の傷心は伺えない。シャワーを済ませたタンクトップにショートパンツ姿でクッションの上に胡座をかき、タオルを頭に巻き付けたスッピン顔であっけらかんとしている。唯一彩希を苛んでいるとすれば、車を降ろされて二キロ近くをミュールで歩いてきたから、擦れて赤くなった外指が痛くて摩っていることくらいだろう。全くこたえていないというのも問題だと思った。
「だから言ったじゃん、あんなクズっぽい男なんて、ぜぇーったい、長続きしないってさぁ」
「一ヶ月ってやっぱ短い?」
「短いだろ」
 むしろ一ヶ月よくもったと言っていい。どう見てもあの男には他にも女がいるニオイがしていた。果たして彩希が「彼女」だったのかもあやしい。「……普通ならヤラれてハイおしまいだったんだろうけど、そんだけもったのは、あんただからだよ」
「そっかー。……やっぱ私ってば、超カワイイもんね。すぐに別れるのが惜しかったんだな」
 違う。おそらくは、彩希がフラれたのと同じ理由でキープされていただけだ。別れるけどセフレならいいと言われたことがその証拠。由香里はもう一度身が萎むほどの深い溜息をつき、会話中に足先に気づいてペディキュアを塗り直し始めた彩希を見た。
「あんたさー。もうちょっと自分を大事にしなよ?」
 真面目に諭したのに本人はフーと爪先に風を送りつつ、
「なにそれ、ユッコ。何だかババくさいよ?」
 タオルを外すと顔の前に垂れてくる髪がうざったるいのか、メイクケースから取り出したゴムで後ろを縛り、本格的にペディキュアを整えている。
「ちょっ! 真面目に聞けって」
 テーブルを叩いて、「……あの男がクズっぽいことくらい、あんただって分かってたろ?」
「うん。ナンパしてきた時点でモロ」
「じゃぁさ、何で付き合うん?」
「そりゃ、あいつの……」
「あ、ちょっと待った。訊いた私がバカだった。言わんでいい」
 彩希が言葉を繋ぐ前に制した。何故か彩希の方が肩を竦める。
(なんでこんな風になっちゃったんだろーなぁ……)
 由香里は服飾デザイナーを目指し、卒業後は札幌ではなく、何と言ってもファッションの中心である東京の専門学校に通うと早いうちから決め、その通りに進路を取っていた。高校三年間同じクラスで仲のよかった彩希は、卒業後は地元でアルバイト生活をしていて、次に会うのは成人式かなぁと思っていた。
 だが由香里に遅れること一年後に突然東京に出てきて部屋に転がり込んできたのだった。居候するつもりはない、東京で仕事を見つけて生活費はきちんと折半すると言い、実際その通りにしてくれたから、家庭の事情で親の援助が出ない由香里にとっても金銭的には悪くない話ではある。だがいきなり、何の前触れもなくだった。
 携帯でばかり連絡を取っていて、久しぶりに面と向かって会った由香里は驚愕した。高校時代もスカートを短くしていたり、学校指定のブラウスを着崩したり、流行りのメイクをしたりと、いわゆる「普通のJK」だった彩希がド金髪になっていたからだ。エクステを盛ったアイラインくっきりのメイク。やたら体にフィットしてスレンダーさを見せつけるトップスと、長い素足を出してゴールドのギミックがジャラジャラとしたボトムス。もともと見てくれの優れていた彩希は、そんな出で立ちになっても悔しいほど整い、似合っていたが、あまりの激変ぶりに一体地元で何があったんだと問い詰めた。
 動機は極めて不純だった。由香里は親友だから一定の理解は示せるが、知らない者が聞いたら理解不能に違いなかった。
「もうやめな? そういうギャルいカッコ。あんた見た目いいんだからさぁ、もったいないよ」
「別に私、ギャルじゃないよ?」
「いや、そーいうこと言ってんじゃなくて。カッコでだいぶ損してるって言ってんの」
「オッパイでっかくてアフロにしてるユッコに言われたくない」
「私のコレは天パだ」
 こちとらコンプレックスにもなり得る縮毛を、むしろ限界まで伸ばすことでファッションに昇華しているのだ。かつ、バストが大きいのは意識してそうしているわけではない。「……てかさー、あのクズ男からすりゃ、あんた、どう見ても頭も股もユルいギャルに見えたんだろ、きっと」
 本人はそのつもりはないだろうし、由香里にしても彩希が思慮浅く貞操に劣った女だとは思っていない。ただ、初めて会った者が受ける印象についての話をしているつもりだった。
「……やめない。どうせ私、ユッコみたいにオッパイ大きくないもん。知ってるくせになんで訊くの?」


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