〜再会〜-5
「ね、姉ちゃん……はぁっ!はぁっ!……もう、う」
「いいよ!来てっ!和哉」
「あ、ああっ!亜紀ぃ!」
何も考えられない!──。身体はガクガクと震え、短距離を走った時みたいに息が酷く乱れる。それでも僕は構わず、ただ、狂ったように腰を振っていた。
「うあっ!あっ!ああっ」
こんな興奮と気持ち良さ、感じた事がない──。何時の間にか僕は亜紀の身体を抱き締め、奥に届けと腰を突き出し、数え切れないくらいに何度も々、放っていた。
「はぁ、はぁ……うう」
未だ、息をするのも苦しい。僕は終わった後も、交わりを解かずに亜紀を抱き締めた。
汗ばんだ肌に触れ、乱れてる息遣いを聞き、それから、一番好きな身体の甘い匂いを嗅ぐのも含めて、亜紀の全てを感じ取っていたい。
「ああ……とうとう、一つになったんだね」
「そう。これからも……ね」
「本当に!約束だよ」
この先もずっと、亜紀を愛せる──。信じられない言葉に僕は凄く喜び、思わず身体を弾ませた。
すると、その拍子に交わりが解けてしまった。
「ああ……出てくる」
亜紀の中から、滑りのある白く濁った液が溢れて、シーツに伝い落ちていた。
僕の精子と、亜紀の滑りが膣内で激しく混ざり合い、外に姿を現す。シーツに落ちた滑りの中に、薄赤い部分があった。
これら全部、二人が初めて“愛し合った証”なんだと思うと、僕は感激した。
「ああ、亜紀……こんなに」
この時、俺は妙な感覚に困惑していた。
(亜紀と初めての夜。確か、激しい雨と雷に見舞われていたはず……)
それが何故、部屋が明るいんだ?──。漸く此処で、妙な感覚の原因が夢のせいだと気が付いた。
「なんてえ夢だ……」
余りにも生々し過ぎて、気持ちが悪い。
(それに、感触や温もりまで残っている……)
そのおかげだろう。俺の身体は熱を帯び、股関は朝から過ぎる位に元気だ。
「全く。十五年も前の事を夢に見て、おまけに勃起するなんて……」
離別から三年半が過ぎた今──。結局、俺は亜紀という存在を胸の奥に仕舞い込む事さえ叶わず、片時も忘れられないまま現在に至っている。
(子供の頃から、何ひとつ変わっちゃいない……)
こんな、実の姉に対して家族愛以上の感情を抱き続けている俺が、後輩に対する恋愛のアドバイスなんて、どう考えても、おこがましい事だ。
(やっぱり、俺は異常なんだ)
そうだ。俺は人として、大事な部分が欠けている失格者に違いないんだ。
実の姉と肉体的関係を持つなんて、世間なら目を背けてしまう様な行為に、この上ない高揚感と興奮を覚えてしまうケダモノなんだ。
亜紀は、人生に於ける“汚点”を忘れ去ろうと、新しい道を選び、歩き出している。だからこそ胸の内を明かしてくれたんだ。
(──だから俺は弟として、亜紀への想いを捨てなきゃいけないのに!)
答えは既に有る。頭でも解ってるはずなのに、心が激しく拒絶する。あの日からずっと、こんな堂々巡りを幾度となく繰り返しては、酒の力で誤魔化してきた。
それなのに、想いは褪せる事無く、亜紀の温もりを恋しいとさえ思う自分がいる。
(もう、辞めだ!)
そうして何時も、最後は考える事を放棄して結論を先伸ばしにする。こんな俺は狡猾で、卑怯極まりない、下の人間でしかないんだ。