17.-1
「お風呂と浴衣とビール、最強の組合せですね…。」
「横にいるのが志織だから。」
そう言われると、やはり嬉しい。差し出されたグラスにビールを注ぎながら、次長の横顔を見つめる。自分のグラスにもビールを受ける。よく冷えたビールが渇いた喉を潤す。二人で縁側に並んで、ビールを飲みながら、日が暮れていくのをただ眺めている。優しい風が、心地よく火照った肌を撫でていく。日常から遠く離れた時間が、ゆっくりと流れていく。こうしていると、仕事のことや将来のこと、いろんなことが些末なことに思えてくる。テレビや雑誌に無駄な欲望や不安を掻き立てられる都会の日常。知らない間に身体にこびり付いていた不要なものが、温泉のお湯ですべてきれいに洗い流せた気分。
「ご夕食の準備ができましたよ。」
部屋の中から仲居さんの声が聞こえる。座敷のテーブルには沢山の皿が並んでいる。地元で取れたという野菜や、肉や、魚。
「いただきます。」
両手を合わせ、箸をつける。どの皿も美味しい。次長に連れて行かれた店は、どこも美味しかった。
「美味しいですね…。」
「うん、旨いね。一人暮らしだと、なかなか旨いもの食えなくてね。」
「今度なにか作りましょうか…?」
「お、いいの?食べてみたな、志織の手料理。」
「…何がお好きですか?」
「何でも。グリンピース以外なら。」
「ふふ…子供みたいですね…。」
食器を引いてもらう間、二人で宿の周りの散策路を歩く。他に人気のない道に、二人の下駄の音が響く。
「タバコ、吸ってもいい?」
「…はい、どうぞ。」
木にもたれ、懐からタバコを取り出す次長の足下にゆっくりとしゃがみ込む。次長が浴衣の裾をめくり私の前にペニスを差し出す。次長がタバコを吸っている間、他にすることのない私は口でペニスを愛撫する。次長は、細く長く煙を吐きながら、私の頭を撫でてくれる。