そして、本番-7
Vシネマにもチョイ役で出演していたこともあり、俺の演技はなかなかのもんだと評価されたことがある。
それをきっかけに、ストーリー性のあるAVの出演が増え、最近までは女性向けAVで演じることも多かった。
そんな女性向けAVってのは、とにかく視聴者が感情移入出来るように、が大前提。
男は視覚や聴覚など、直接的な刺激で興奮を得るけれど、女は感情が入らないと本当の快楽は得られないからだそうだ。
だから、そういう作品に出演するときは、役を演じるより、役に成りきることを意識してきた。
ここでもそれは同じ。
今から、俺は田所さんの恋人なのだ。
そう思って彼女を見ると、いとおしさが込み上げてくる。
「千鶴……」
ちっさくて、初々しくて、可愛い可愛い俺の恋人。
そいつが今日、俺のために身体を捧げてくれるのだ。
彼女の柔らかな髪に指を通してから、ゆっくりこちらに抱き寄せると、その華奢な身体が小さく跳ねた。
「怖いか?」
「は、はい……。それと……恥ずかしい」
真っ赤な顔で小さく頷く田所さんが可愛くて、思わずクスリと笑ってしまう。
「大丈夫、すごく可愛い」
「ほ、本当……?」
「ああ、可愛過ぎて我慢の限界だ。二人でいっぱい気持ちよくなろうな」
その小さな頭を何度も撫でながらそう言うと、彼女は恥ずかしいのか俺の胸に顔を埋める。
あー、マジ可愛いじゃねえか。
たまらずに顔を隠そうとする彼女の頬を捕らえ、やや強引に顔を上に向かせて、唇を重ねようとした、その時――。
「待てっ!!」
スタジオのドアを乱暴に開いた音と共に、切羽詰まった声が飛び込んできた。