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【その他 官能小説】

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そして、本番-8

すぐさま俺の腕の中にいた田所さんが、離れた。


さっきまで羞恥で真っ赤になっていた顔は蒼白になっている。


そして、突然の乱入者がつかつかとまっしぐらに向かって来るのを呆然と眺めているのだった。


「ツトム……」


田所さんの目の前までやって来た男――彼氏のツトムくんは、ここまで走って来たのだろう、息を弾ませ、こめかみに玉の汗を浮かべながら、彼女を睨み付けていた。


「どうしてここに……」


田所さんは身体だけじゃなく、声まで震えていた。


「お前が悪い会社に騙されて、AV女優にさせられそうって変な電話があったんだよ! 最初はイタズラ電話だと思ってスルーするつもりだったけど、あまりに電話の相手が必死だったから、気になって来てみれば……。お前、ここで何してんだよ! 何するつもりだったんだよ!?」


「……それは」


「綺麗に着飾って、他の男の前でヘラヘラしやがって……! オレと付き合っていながら、お前は他の男とセックスしてる所を撮影するつもりだったんだろ!? 何だよ、AV女優になるのもまんざらじゃないみたいだな!」


「…………」


怒りを露にするツトムくんに、田所さんはどうにも言い訳出来ず、俯くだけ。


ただ、彼女の足元にポタッ、ポタッと涙の滴が落ちるだけだった。


そんな様子を端から眺めていた俺を、傳田が手招きするので、音を立てずに田所さん達の側をそっと離れる。


そして、腕組みしている傳田の元に行くと彼女は、


「成功ですね」


と、満足そうに黙り込む田所さんとツトムくんを眺めているのだった。


うーむ、この修羅場を見てるととても成功とは思えないのだが。


チラ見するとニッと唇の端を上げている傳田の横顔。


仕方ない、ここはコイツを信じよう。


「……千鶴」


髪の毛をクシャリと握りながらあからさまに大きなため息を吐くツトムくん。


怒りの行き場が無いようである。


……まあ、当然だな。


「オレに何か不満があったのか? 嫌いになったのか?」


ツトムくんの詰問に、田所さんは泣きながら首を振るだけだ。


「……じゃあ、ただ単にハメ撮りしたかっただけだったのかよ」


「……違、違うの……」


辛うじて声を振り絞る田所さんに、ツトムくんは盛大な舌打ちをした。






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