そして、本番-5
でも、テンションが上がる取手の気持ちはわからなくもない。
それほどに、田所さんは可愛らしく、色っぽかった。
こんな可愛い娘の初めての男になれるなんて、男冥利に尽きるじゃないか。
俺は田所さんのぎこちない笑顔に柔らかな笑みを向けた。
「さ、田所様。始めましょうか」
「は、はい……」
「大まかな流れはご説明させていただいたとおりです。『恋人同士の初めてのセックス』をテーマとし、なるべくキスに重点を置き、前戯を長めにして、田所様にリラックスしていただきます」
AVを撮る時ほど細かい指示は出さないが、ある程度の流れは依頼人にも理解してもらう。
客の要望にそって、シチュエーションやテーマを決め、ストーリー性のある作品を作るためだ。
田所さんの要望は、「ロストバージン」がメインテーマであるが、乱暴にされるのがいいのか、甘々がいいのか等々、細かい希望を打合せし、そして「恋人同士の初めてのセックス」というコンセプトに至った。
あとは内容だが、田所さんは素人でバージンなので、俺のリードに委ねる、とのこと。
だから、比較的今回の仕事はやりやすい。
あとは、田所さんの綺麗な姿が映るよう、俺はカメラ位置を把握しながら、彼女を気持ちよくさせる。
ここで、AV男優として培ったテクニックが活きるのだ。
「じゃあ、最初はベッドの側でキスシーンを長めに撮ります。後は、私に任せて下さい」
「……はい」
「今から私達は恋人を演じますので、田所様のことを名前で呼ばせていただきますね。私のことは、御代田でも、光司でも、お好きなように呼んで下さい」
ニッコリ笑って彼女の肩にポンと手を載せると、ビクンと田所さんの身体が大きく跳ねる。
……ん?
そんな彼女に、俺は小さく眉を潜めた。