恋愛模様-4
「っあ、…」
「え?」
「肩…痛い…」
そうっと抱き締めた手を解き、肩に触れない様にまた手をまわした。
「たぁき…泣かないで」
微かに聞こえる鼻を啜る音。耳朶に感じる涙。たぁきの涙は暖かい。
「…力無くて、本当…ごめん……」
「どうして?私、こうして大丈夫だよ?たぁきのおかげで…」
「…助け呼ぶしか出来なかった。俺、自力でサヨの事助けられないって解ってたから。非力な野郎だって解ってたから。……最低だ………」
「たぁき…」
「俺だって風の様に現れて、ボコボコに殴られてもサヨを守れば良かった。……馬鹿みたいに冷静な自分なんか捨てちまえば良かった。だって俺……今こんなに後悔してるんだ」
「ねぇ、たぁき。私、たぁきのこと……すき」
自分を責め続けるたぁきを見て私は苦しくなった。そんな事聴きたくなかったから。だから、唇が心の奥底を紡いでしまった。今まで逃げていた、私の飾らない気持ちを。
「私もきっと、たぁきがキスされる前に来てくれたら嬉しかったよ。でも、そんな考え無しに行動するのはたぁきじゃない。非力で臆病だけど、必ず助けてくれるのが…たぁきだから。ずっと見て来たんだから…私、幼馴染みだよ。」
「サヨ……」
「だから、責め無いで。否定しないでよ。私はたぁきの全部が好きなんだから」
告白して気がついた。みぞおちの辺りがジリジリする。心臓は脈打ち苦しい。たぁきの返事が…怖いよ…
「俺は……サヨを好きじゃない」
…え?
……胸が痛い。
あんなに一緒にいたのに…私の空回り?
身体中が悲鳴をあげてる。今すぐ倒れてしまいそう。
目頭が熱くなる。たぁき、ひどいよ……たぁき!!!
抱き締めている腕をたぁきが解く。顔を見たら涙が出てしまいそう。見れないよ…やだよ、たぁきの馬鹿ぁ。
「ちゃんと聞いて。俺はサヨを好きじゃないんだ……」
二度も言わないでよぉ。喉の奥がジリジリする。涙が溢れてくる。ダメ…耐えれない。
「馬鹿。なんて顔してんだよ。ちゃんと聴け。…俺はな…」
「好きじゃないんでしょ」
たぁきから言われるのは、耐えれない。涙声で喉は痛くて、最悪だ…私。
「ああ。好きじゃない。愛してるんだ」
な……?
「俺はサヨを愛してる。もう、好きなんかじゃ言い表せない」
私の身体はお調子者みたい。たぁきの言葉一つで、身体の痛みは消え去ってしまったのだから。
「唇、血が滲んでる」
優しく壊れ物を触る様に、そっとたぁきの指が唇をなぞる。
「ごめんな…」
「たぁき…たぁき…」
スローテンポで唇が近付く。瞼を閉じる。たぁきの唇に意識を集中したいから。唇の柔らかさも、甘さも、熱さも全部感じたかったから。
――っ…
ぷにっと触れるキス。たぁきの唇は意外に固かった。一瞬が永遠に感じるなんて、よく言うけど…本当にそんな感じ。さっきの嫌悪感はまるで無い。ずっと触れたかった唇…ずっと、ずっと私の身体は欲しがってたんだ。だから……
「痛い?」
「ううん、もっとしてたいくらい気持ちいい」
「ふはっ、それは光栄だな。じゃ…お言葉に甘えて」
にやけた顔…あの、少し固くて熱い唇がまた触れる。甘い匂い…懐かしいたぁきの香り。
あ、眼鏡をかけててもキスって出来るんだなぁ…なんて呑気に考えたり。
もっと吸い込みたくて唇を開けば、待ってたと言わんばかりにたぁきの舌が絡まる。全然気持ち悪くない…ううん、もっと。熱い舌が欲しい、触れ合いたい。