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年上の男
【女性向け 官能小説】

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2.-1

 翌朝いつもより早く出勤した志織は、会社のサーバーにアクセスしいろんなファイルを開いてみたが、職員の個人情報は生年月日すらどこにも見当たらなかった。次々と舞い込む雑用とも思える事務作業に忙殺され、今日もあっという間に過ぎ去って行く。次長とは会話を交わすこともなく、1日が過ぎた。デスクを片付け帰り支度を整えているとき、智樹からのメールに気づいた。

《今日部屋行ってもいい?》
《いいよ。晩ご飯作って待ってる。なに食べたい?》

 お互いに一人暮らしだが、仕事も忙しく、会えるのは週に1回程度だ。智樹が部屋に来ることもあれば、志織が智樹の部屋に泊まることもある。近所のスーパーに寄り、二人分の食材を買ってマンションに戻った。丁度夕食の支度ができたころ、ドアフォンが鳴った。智樹がコンビニで買って来たビールと梅酒を飲みながら二人で夕飯を食べ、珈琲を飲みながらお互いの仕事の近況を報告し合う。順番にシャワーを浴び、パジャマに着替え、ベッドに入る。セックスをして、狭いベッドで眠る。もう何年も繰り返してきた行為だった。智樹は草食系と言うのか穏やかな性格で、食事も、アルコールも、セックスも、少しずつしか求めない。そういうところが志織には好ましかった。一緒に過ごしていて、心地よさを感じる唯一の相手だと思っていた。安心しきったような顔で安らかな寝息を立てている智樹の寝顔を見ながら、そう思った。

「あ…。おはようございます。」
エレベーターの中の山崎に一瞬ひるんだような顔を見せてしまい、慌てて取り繕う。
「おう、おはよう。どうした、俺が乗ってたら乗らないの?」
「いえ…。先日はごちそうさまでした。」
「今日もロングスカートだね。」
「セクハラなんとか委員会に行ってきます。」
わざと顔をそむけ、エレベーターの開くボタンを連打してみる、次長に分かるように。
「ははは…。担当者、知ってるの?」
「いえ…、知りません。誰でしたっけ。」
「いや、俺も知らない。用事ないし。ま、それはいいけど、よかったら今晩食事でもどうかな?」
「え…、私と、ですか…?」
「他にだれもいないだろ?」
周りを見回す次長の目は、笑っているのかいないのか、分からない。なにを考えているんだろう。なぜ私なんだろう。
「はい…、分かりました。」
「そ。じゃあ後で時間と場所メールするから、見といて。」
言い残して開いたドアからエレベーターを下りていく次長の背中を見送った。


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