改變の容器-1
無垢なスリットは延々と舌先に舐られ、受容れはじめていた。
本来は知り得るはずのない“悦び”の記憶。
磯崎汐莉と呼ばれし少女にも、等しく既視感に似た記憶が呼び起されはじめようとしていたのだ。
「おっ おなかの奥がっ おなかの奥があついっ よおぅっ!」
その言葉の直後、汐莉は幼い身体を戦慄かせるように果てた。
「汐莉ちゃん、“ミルク”の事知ってる…… よね?」
数秒の間隔をおいて、ぐったりとする少女の耳元で囁く。
内に宿る淫欲の記憶を紐解きながら、時と容を変え試みる事になる。
それは己の欲望に準じる行為とも言えた。
《これはけして夢や妄想などではない》
記憶とも既視感とも呼べぬ不可思議な感覚にあって、幾つもの得難い情報が蓄積されている事を感じる。
それはすでに起きてしまった事やこれから起きる事、その全ての因果と言えるものが不思議なまでに確信となって感じられるのである。
そして今の自分が磯崎恵利子の友人であった不易一文でもなく、汐莉たちの叔父でもない存在へと変わっていくことを感じ取っていた。
それはあえて表現するなら、“融合による新生”とでも呼べるものであった。
しかし得難い能力をもってなお、自分がこれから望めることに限りはある。
幾つもの因果を知り得ていても、事の起点に経ち返りやり直す事は叶わない。
叶えられる希は今現在を起点とし、知り得る情報を元にこれからの事象を修正・改変することのみ。
当然の事ながら修正・改変を試みれば、それに連動して認識する因果も変わってくるであろう。
事実、汐莉たちの叔父が消失した事により、その事象は立場を不易一文に代え時期も半年ほど遅れて起きている。
それでも少なからず好都合な事もあった。
汐莉は“不易一文”と言う容に対し好意を抱き受容れ、その姉である恵利子も同様の傾向が見られつつある。
因果への干渉、影響を最小限に抑えつつ、己が希を叶え続けねばならない。
まずは手始めに…… みりあ、汐莉の友達、その少女の名が脳裏に思い浮かぶ。