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【その他 官能小説】

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こじらせ処女-13

「文句あるんですか」


ジロリと睨まれ、慌てて首を横に振る。


「あ、いやいや、違うんだ。結構遅めだったから、意外だなって」


「早い遅いは関係ないですよ。焦って好きでもない人としたって後悔するのは目に見えてるし」


傳田の言葉に、ずっと胸につかえていたものが取れた気がした。


「そう……だよな」


「本当に好きな人の前でしか、身体をさらけ出せない。それがセックスなのに、好きじゃない人にさらけ出すのは本末転倒だと思います」


「だよね! だよね!」


「まあ、社長は誰彼構わずセックスできるケダモノだから、こういう気持ちは理解できないでしょうけど」


「……だよね」


テンションが上がりかけた相槌が、傳田のキツい一言で一気に萎む。


キッツいな、この女。


ついつい苦笑いになるけれど、それもまた悪くない。


田所さんとの面談の時に、うまく言えなかったことを傳田が代弁してくれたのが嬉しくて、苦笑いもにやけ顔に変わる。


そうだよ、初めての相手が好きな人じゃなかった女の無理に作った寂しい笑顔を、俺は幾度となく見てきたじゃないか。


普通の女なら、初めては好きな人としかしたくない、それが当たり前なのだ。


……よし、決めた。


煎餅を一枚食べ終えて、指についた塩を舐めつつ、白い事務用のテーブルをふきんで拭いている傳田の端正な横顔を見上げた。


コイツなら、きっとうまくやってくれる。


「おい傳田」


手早くテーブルを片付け、事務所の外にある給湯室に向かおうとする彼女の背中に、声をかけた。


「何ですか」


そして、相変わらずのどこか冷めた視線。


性を生業とする俺を蔑むような冷たい目付きにいつも肩身の狭い思いをしているけれど、今日はこの冷たさがやけに心強い。


なんだかんだ文句は多いけど、与えられた仕事は必ず遂行する、傳田は俺の優秀な右腕なのだから。


そう確信した俺は、ニッと不敵な笑みを彼女に向けて、


「ちょっと頼まれて欲しいんだ」


と、不審そうに歪んだ眉を眺めつつ、そう言った。




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