秘密の部屋-12
苦しそうな呼吸の奥で国王がクツクツと笑っている。
ベットに近づいて幕を捲ると、そこには年老いて痩せ細った国王が寝ていた。
「随分とお年を召されましたね」
「ああ 君達が 実験施設に入ってから 10年は たっている」
「そんなに、ですか」
「君達に 許してもらおうとは 思っていない……」
「では『選ばれし民』を創るのは国王の意志で?」
「いや 始めは 違った」
銀の民を襲う謎の発作の原因を調べ、特効薬を作る事が始めの目的だった。
だから国民の中から生命力の強い者を選び出し、銀の民のDNAを流して発作が起きるか試してみた。
結果は大失敗。
殆どの実験体が死んだそうだ。
「そこで 実験は終了 の筈だった」
「しかし、研究者達は止めずに生き残った実験体を使って実験続行ですか」
しかも目的は『選ばれし民』創りへと変わり、更には自分達もが『選ばれし民』になる、という事にまで変化。
「様々なDNAを体内に入れた私が言いますが、他民のDNAは毒ですよ」
「始めの 実験で 分かっていた 事だ」
「では何故?」
「愚か としか 言いようがない」
だろうな。
「研究者達は 何年も前から 選ばれし王が居る と噂を流し 君が スムーズに 王になれるよう 布石を敷いている」
つまり、どこか田舎に隠れ住むという選択は無い訳だ。
「君に 謝る事は 出来ない ただ 民を 頼むとしか 」
結局、道はそれしか無いのか。
銀の民である国王は、元気なく垂れた獣耳をピクリと動かした。
「ぐっ……いかん 発作が 」
国王の喉から唸り声が捻り出され、病床な筈の身体がグウンと起き上がった。
「ガ グウゥ ガアアァアァッ!!」
頭部を狼のそれに変えた国王が飛びかかってきた。
ザシュッ
それは目の前で弾け飛び、残った身体が床に落ちる。
「国王?!カウル=レウム王?!」
中の騒がしさを聞きつけて、さっきの若者が飛び込んできた。
若者の目には、黄金の蜥蜴尻尾に串刺しにされた国王の頭部がはっきり見えたであろう。
「国王は死にましたよ」
「……はい」
若者は片膝をついて頭を下げる。
「たった今から、私の仕える王は貴方です。カウル=レウム王」