秘密の部屋-11
「ぐっ」
一気に吐き気がして慌てて口を押さえた。
「さあ。選ばれし民の誕生に……」
「乾杯!!」
自分を無視して勝手に祝杯が上がる。
いわゆる『精杯』を一気に飲み干した馬鹿者共は、想像通りバタバタと床に崩れていった。
「がっ……へ、変化が……」
「これが……選ばれし民への……」
本当に馬鹿じゃないのか?そんな訳があるか。
「ごばっ!?」
「ぐああぁ」
次々と血を吐いてのたうち回る奴らを見ながら、繋がっていた鎖を引きちぎった。
「そ……そんな……馬鹿な……」
やっと異変に気づいたのか、1人が自分に腕を伸ばしてくる。
「馬鹿は貴様らだ。私の精液を飲んだだけで『私』になれる筈がないだろう?」
自分の事しか考えないような貴様らと、一緒にするな。
次々と息絶えていく人々を無視して彼女を抱き上げる。
規則正しく上下する胸を見、腕の中の温もりに心底安堵した。
ガチ
すると、無機質な音がしてドアが開いた。
そこには若い青の民の男性が立っていた。
「カウル=レウム王。国王がお待ちです」
「……王も『セイハイ』が飲みたいのかい?」
「まさか」
青の民の若者は鼻で笑い、汚物を見るような視線を倒れている人々に向ける。
「自業自得とはこの事ですよ。父上」
「!」
死体と化した1人に声を投げつけ、若者は顔を上げた。
「さあ。どうぞ」
ドアを大きく開いて促される。
(他に、道は無い……か)
とにかく、自分が何故こうなったのか、彼女が何故こうならなければならなかったのかを知っているのは、王なのだろう。
湿った長い長い洞窟を抜けると、粗末なドアがあり、更にその奥に進み、迷路を抜けた所で不自然に豪奢なドアが現れた。
「国王がいらっしゃいます。彼女は私がお預かりしましょう」
若者の言葉に躊躇いつつも彼女を渡す。
何となく、信用できそうな気がしたのだ。
彼女の頬を軽く撫でてから踵を返してドアをあけると、そこにはこれまた豪奢なベットがあった。
「主が カウル=レウム王 か ?」
ヒューヒューという呼吸の間から途切れ途切れの声が聞こえる。
「そのようですね」
好きでなった訳ではない意志を込めて答えた。