ゲームの行方-5
あの日、俺は賭けに出た。
たった一つの柚香との繋がり・・・。
クリスマスの約束で自分にけじめをつけるって。
もし、柚香が来てくれたならきちんと自分の気持ちを伝える。
来なかったら・・・。
ぐっ・・・と拳に力を入れる。
時計を見る。
もう昼になるのか・・・。
その時、びゅうっと北風が吹く。
体の芯から冷え冷えとする。
だけどまだ、諦めたくない。
そう思い風の来ない石門の裏に身を寄せる。
どのくらい石門の裏で風避けをしていただろう。
ふいに石門の前に人の気配を感じた。
あ・・・。
見た瞬間、俺は「その人」を抱きしめた。
「柚香・・・っ。」
嫌がるか、と不安になり逃げられないようぎゅっ、と力を込める。
柚香は・・・逃げなかった。
その事実に、ほ・・・っと安堵の息を漏らす。
「今更何を言っても言い訳にしかならないのは分かってる。・・・だけど、柚香を好きだって言うのは嘘じゃないから・・・っ。俺、柚香を失くすの嫌だ。」
まるで子供みたいだと自分でも思う。馬鹿みたいに必死で・・・自分らしくない。
だけど、それでもいいから・・・。
「あたしは・・・ずっと先輩が好きです。だから、そんなに辛そうにしないでください。」
声をかけられ、柚香を見る。きっと今の俺は凄く情けない表情をしているに違いない。
「・・・もう1度、最初から始めてもらえませんか?」
静かな、だけど凛とした声。
「折原 柚香さん、好きです。俺と付き合ってください。」
真っ直ぐ柚香を見て、今度は「好き」の気持ちを精一杯込める。
「・・・はい。」
頬をほんのり紅く染め、最初と同じ笑顔を見せた。
〜Fin〜