北島美枝の話-5
俊和を生んで一ヶ月すると美枝はまた浜で働きだした。美穂と俊和の世話は祖母が元気なので引き受けてくれた。
子供を生んでから美枝はますます女の魅力がました。男を知った身体の線が男にはますます艶めいて見える。浜で働く若者や、沖から帰ってくる若い漁師達が、美枝の周りに集まってきて、
「そろそろ、したくならねえか、いつでも言ってや」
「美枝、枯れてきたんでねえか、オラがつばつけてヤッカ」
「みつお、ただし、いい加減にしときや、何ならオラが代わってヤッカ」
「お前のような腐れまんこ、いらねえよ」
「なに、よくもぬかしたな、かっさばいてやる」
「おお、こええ、出刃もって向かった・・・・・」
こんなことが毎日続く。家にも夜になると近所を若者がうろうろとする。美枝は俊和が二歳の誕生を迎えたときに両親に
「大阪に出て何か仕事を見つけるから、好きにさせて、
晴枝も看護学校を終えたら大阪に出るといい、咲枝は頭がいいから高校を終わったら大学を受けろ、大阪の。姉ちゃんたちそれまでにしっかりと大阪で住むところを見つけてお前を迎えるから」
「そやな、こう若い者がうるさくては、。お前は危ない、お父さん美枝の好きにさせてやりましょう」
美枝は早速支度をして、働いて貯めた金と、離婚のときにもらった金を預金した通帳とカードをもって、早朝の列車に乗って美穂と俊和を連れて大阪に出た。
前に浜のおばさんたちが慰安旅行で行った大きな御陵のある街をネットで調べて、大阪梅田に着くと、地下鉄
南海電車と乗り継いで、最寄の駅に降りた。
昼過ぎに到着して、昼飯を取ろうと繁華街に入っていった。どこも昼時でいっぱいの人で、店を探しているうちに、この辺では有名な風俗街に入ってしまった。
「どうしたの、子供さん二人連れて、この店で働きたいの。賃金はいいけれど身体はきついよ。どこから来たの、この辺は夕方にならないと、開かないの」
「別に働こうとは・・・・・・でも働かないと。兵庫の日本海側から来ました。食堂がどこも満員で」
「昼時だからね、私、ここで働いているの。車を取りに来てね、これから家に帰るの、一緒においで、うちの近くに食堂があるから。私阿部彩乃と言うの、お出で、お嬢ちゃんあの車」
「ご親切に、私は北島美枝、美穂と俊和です。お姉さんに挨拶して」
「これはご丁寧に」
車に乗ると、
「ここは、旧市街地で、私の家は新しく出来た団地でグリーンタウンって言うの、電車もあります」
広い道路に出ると、畑や田圃が暫く続いて、前方に高いビルが林立するのが見えてきた。
「あそこが団地です」
「凄いビルですね」
「昔は丘陵地で、竹や木で覆われていたのを開発してベッドタウンにしたのね」
ビル群にはいると道路は昔の谷間に従って緩いカーブが多い、電車がいつの間にか並列して走る。駅が近づくと繁華街になり一ヶ所が未開発で残っている。
「ここよ、私の家は」
「昔のままですね、大きなお屋敷で」
「昔は地主だったのね、入って、彩香帰ったよ。お客さん」
奥から背の高い奇麗な娘が出てきて
「お帰り、お母さん。いらっしゃいませ」
「お昼、何か作った。お客さんの分ある」
「カレーだから大丈夫」
「それなら大丈夫、上がってください。昔の建物で広いばかりで、こっちへお出でなさい」
「お母さん囲炉裏がある、家より大きい」
「本当だね、広いし」
「美穂ちゃんのお家も囲炉裏があるの」
「狭いですけれど、一家が食事します」
「うちもですよ、この周りを囲んで」
「落ち着きますね」
「トイレはいいの、いきたかったら、この廊下をまっすぐ行くと突き当たりだから、彩香連れて行ってあげなさい」
奥の方から四人の男女が現れた。
「家の下宿生、医大の学生さん。自己紹介して」
「吉田千夏です。いらっしゃいませ」」
「清水慶太です。こんにちは」
「妹の真由です、よろしく」
「中川美優です。仲良くしようね」
「四人とも医大の学生さん」
「北島美枝です。美穂と俊和です。ちゃんと挨拶しなさい」
彩乃の帰りを待っていたのか囲炉裏の周りに座って食事が始まった。普通のカレーなのに美枝はとてもおいしく思った。見ず知らずの土地に来てこのようないい人に最初に会えるなんて、これから先が明るく開ける感じがした。
食後に子供たちと彩香が遊んでくれるので、美枝は彩乃と別室で自分が上阪した理由を話した。
「そうだったの、若いのに苦労をしたんだね。私もあの子はレイプされて高校二年ときに生んだの、だから大きいと思ったでしょう」
「よく生みましたね、親御さんの反対はなかったんですか」
「それは言われたし、学校でもいろいろとあったが、こっちが確りしてれば何ということはないよ」
「驚きました。でもこの家は」
「父の父、祖父の家で、父も母も亡くなったので、私が相続したの」
「相続って大変でしたでしょう」
「まあね、だから金はありますの、裏に畑もね。美枝さんうちで働きます?。風俗だから決して綺麗な仕事ではないが、金を貯めるには最適よ、妹弟を呼び寄せるのでしょう。あまり時間がないよ」
「ハイ、そうさせてください」
「美香さんたちは、うちの子らで見ているから。私と一緒に行きましょう」