相性が良いのよ-5
「聞いたよ、二人はそう言う関係か?」
「お風呂に一緒に入ったよ」
「なに、・・・・・・立花君、君は塔子が我が家の跡取りと知って・・・・・」
「とんでもありません、一人娘さんで、跡取りと言うことはつい昨日でしたか教えて貰いました」
「君は自分のしたことに責任取ってくれるのかね」
「立花さんはどちらのご出身ですか」
「鳥取県の鳥取市です」
「うちは島根県の江津市です」
「島根県のお方でしたか、知りませんでした」
「塔子は何も話していないの? 立花さんに」
「そんな暇はないもの、泊まるだけだし、目を覚ますと涼太さんは学校へ出かけていないし」
「じゃ、どうして結婚したいの、話をしたの」
「これからしようと思っていたのに、お母さん達が来てしまって・・・・・・涼太さん、結婚して下さい塔子と」
「今になって・・・・・・お父さん何とか言って頂戴」
「立花君はどうかね」
「塔子さんは、お医者さんとしては、ご立派な方ですが、お嫁さんとしては、如何なものかと」
「涼太さん、ひどい、一緒にお風呂に入ったし、毎日抱いて寝てくれたし、病院から、おんぶして帰ってくれたし」
「ご飯も作ってもらったし、洗濯もして貰ったし・・・・・・でしょう。立花さん」
「ハイ、その通りで」
「ひどいは、涼太さん、パンツの色が合ったのに、相性が良いのに」
「パンツの色って?・・・・・またやったの、ご免なさいね、塔子は変な縁担ぎでして・・・・・今度はパンツでしたか」
「立花君は長男ですか?」
「兄と妹が居ます。塔子さんのような調子はずれの妹ですが、よく似てます」
「お兄さんは」
「鳥取大学の獣医学部の講師をしています。結婚しまして甥が居ます」
「妹さんは」
「鳥取大学の医学部五年生です」
「驚いた、涼太さんそんなこと一度も言わなかった」
「そんな余裕がありましたか塔子さん」
「塔子、立花君が言うとおりだ。こんな娘で良かったら貰ってください。貴方以外の人では無理でしょう」
「本当に、誰に似たんでしょうかね」
「志乃さんに似たんだよ」
「お父さん、私は温和しかった」
「いやいや、貴女に振り回された私が言うんだから間違いがありません」
「じゃ、どうして実家の父や母に頭を擦りつけて、志乃さんを下さいと言ったの」
「それは、志乃さんが、私に電話をしてきて、お腹が痛いから来て、って言うから駆けつけると、志乃さんは、本当にお腹を出して・・・・・・この先言おうか?」
「もうそのことは、言わないで・・・・・・」
「お母さん、お父さんを誘惑したんでしょう、お母さんのやりそうなことよ」
「塔子」
「赤くなってる、私は涼太さんと、まだです、頂いてはいません、ね、涼太さん」
「何のことですか、塔子さん」
「分からなければいいのです。そのうち私が教えてあげます」
「志乃さんそっくりだ」
結婚するのに障害を越えなければならない者もいれば、立花涼太と長沼塔子のようにパンツの色が取り持つ縁もある。二人は結婚して塔子のマンションで暮らすことになった。
結婚しても塔子の性格が変わるわけがない。とにかく新婚夫婦と言うことは救急患者には何の関係もないから
新婚初夜の記念すべき夜から呼び出しが始まり、涼太の独り寝が何日も続いた。
塔子はマンションの家に帰らないというのではなくて、二人がゆっくりと話す時間がない。涼太が朝目を醒ますと隣に塔子がぐっすりと眠っている。起こしては可哀相だとそっと起き出すと、涼太は朝食を作って一人で食べると、アルバイトの中学校か大学の研究室に出かける。目を覚ました塔子は涼太の作った朝食を食べると、時間があれば入浴をして、洗濯機を回して、化粧をして病院へ出かける。