再出発-8
翌日から有樹との生活を再開させた瀬奈。以前の生活しを思い出しながら一日を過ごす。以前は浮気に悩みに悩んで一日中考える時間が多かったが、今は違う。空いた時間に頭に思い浮かぶのは海斗であった。正直戻って来た事を後悔している。戻って来て分かったのはやはりもう有樹を愛せないという事だ。しかし何故こちらの生活を頑張ろうとしているのか…、それはあの憎き女、優衣に負けたくない一心であった。もしその勝負に勝った瞬間、果たしてそれから有樹と一生を共に出来るかは自分でも分からなかった。いや、有樹が変わってくれさえすれば瀬奈は再度有樹愛する心構えはある。それが唯一有樹と上手くやり直せる道だと思っていた。
瀬奈が戻って来てから2週間が経った。それまで有樹の体からは忌々しい優衣の香水の匂いはしなかった。実際、有樹はさすがに優衣と会うのを控えていた。その甲斐あり穏やかに過ごす瀬奈に安心感を抱いていた。
しかしそれが有樹の悪い所だ。そんな瀬奈をもう大丈夫だと誤った判断を勝手にしてしまったのだ。久々に優衣に会いたく…いや、優衣とヤリたくなってしまった。有樹の誘いに、待ってましたとばかりに即答でOKを出した優衣の元へやって来た有樹は優衣の野獣のようなセックスに自らも野獣になり激しい肉弾戦に燃えてしまったのであった。
「ねぇ、私の方がいいでしょ?」
「ああ、最高だ…。」
「でしょ?なら早く別れて私と結婚してよ。」
「…そのうちな。」
あまり遅くなると瀬奈に怪しまれる。有樹はそそくさと優衣の部屋を出て、匂いを誤魔化す為にわざと走り汗をかき、何食わぬ顔をしてから自宅へ帰る。
「お帰り。ご飯出来てるよ?」
「ただいま。先に風呂入るよ。」
「うん。」
瀬奈は気付いていない様子であった。有樹はホッとしながら浮気の痕跡を抹消すべく風呂に急いだ。
「勃つかなぁ。勃たなかったら怪しまれるからなぁ…。おっ、問題なし。タフだぜ、俺のチンポは!」
そう思いながら体を洗い流した。
有樹が風呂から上がると夕食の準備が出来ていた。待っていた瀬奈も一緒に食事をとる。
(けっこうイケるかも。暫く優衣とも遊べそうだな…。)
懲りない有樹。優衣との浮気はバレずにイケそうだと安心した。
しかし有樹はゴミ箱の中にさっき外したネクタイがズタズタに切り刻まれて捨てられていた事には全く気づいてはいなかったのであった。
「味、平気?」
「ああ、美味いよ?」
「そう。良かった。」
ニコッと笑った瀬奈に渦巻く心の中は有樹には全く気付けていなかったのであった。