喜びと痛み-7
初めて扱う機械におっかなびっくり手を触れて、恐る恐るかけてみる。
「ぁ」
『炒飯が良い』
ゴーグルの画面に映った文字に、リョウツゥはクスクス笑った。
「分かりました。ニンニクは抜きが良いですよね?」
気をきかせたリョウツゥにジルは尻尾を振って答えた。
腹を満たすと再びもふもふされた。
満腹で気分も良かったのでされるがままになっていたのだが、次第に身体が重くなってくる。
(?)
何だろう?と思い首を動かしてみると、なんと、リョウツゥはジルを抱きしめたまま寝息をたてていた。
(は?!)
時計を見てみたがまだ7時だ。
緑の民は夜も朝も早いと聞いてはいたがここまでとは。
(つうか危機感なさすぎっ!)
そもそも、男を一人暮らしの部屋に招き入れた時点で危機感が無い。
更に男が居るのに寝てしまうとは。
(くそ……)
ジルはもぞもぞ動いてリョウツゥの腕から抜け出そうとしたが……。
「ん〜……」
(う゛)
寝惚けたリョウツゥがぎゅうっと腕に力を入れて離してくれない。
(あ゛あ゛ぁ〜〜〜)
ジルは更に力を込めて抜け出そうとしたが、リョウツゥの目元に光るものを見つけてギクリと止まった。
「ん……バイン……さん」
愛しい名前を呟き、一筋の涙を流す。
(……く……)
あまりにも切ない声の響きに、ジルの胸がギウウっと締め付けられた。
ジルは舌を伸ばして涙を舐めとり、大きな尻尾でリョウツゥを包み込んでやる。
「んふ」
安心したように息を吐いたリョウツゥの腕から力が抜けたが……ジルはもう、そこから抜け出そうとはしなかった。
ーーーーーーーーーーー
「ご、ご、ごめんなさい」
翌朝早く、リョウツゥはジルに平謝りしていた。
起きたら狐のジルに抱きついていた自分に驚き、思わず悲鳴をあげてひっぱたいてしまった。
当のジルはジンジン痛む頭を両前足で抱えて悶えている。
「あ、あの……」
悶えるジルにリョウツゥが手を伸ばした瞬間。
『わふっ』
「ふええぇ?!」
ジルがガバッと飛びかかってきた。
「え?わっ!」
そのまま仕返しとばかりに顔をペロペロ舐められ、リョウツゥは笑いだす。