貧乳コンプレックス-7
「どうしてそんな胸に拘るかな。気にすんなって」
保住は呆れたように言う。
「だって」
「チビなところもその胸も、全部ひっくるめてお前を好きなんだから、それで良いだろ」
好きな人に抱き締められて、おまけに自分の全てを好きだと言って貰えて。
17年間、本当に今以上嬉しかったことはなかったかもしれない。
思わず嬉し涙を零したわたしに、保住は笑った。
陸上部のホイッスルや、野球部の掛け声が校庭に響く。
部活動に励む彼等を傍らに、わたしと保住は並んで歩いていた。
今までも何回か一緒に帰ったことはあったけれど、恋人になって初めての下校だ。
爽やかな風が吹き、火照った身体を沈めてくれるけれど、この胸の鼓動だけは収まらない。
「――それにほら」
「?」
小首を傾げるわたしに、保住は両手を閉じたり開いたりして言った。
「俺が揉み揉みしたら、デカくなるかもしれねぇじゃん? お前の胸」
「〜〜〜〜〜〜!!」
最後まで軽口を叩く。
全く、こいつは……!
わたしは顔を真っ赤にして、奴のその顔に鞄を思い切りぶつけたのだった。
――その後日。
舞子から「茜、胸大きくなった?」なんて言われたりしたのは、また別の話。