甘-10
もう一度、外れないか確かめる。
「ムダだよ。外したくてもそれは外れません。
逃げたくても・・・逃がさない」
セックスの最中の悪魔とは全く違う声色で
王子に戻って私をなだめて甘やかす。
王子の顔と悪魔の顔と、二つの顔で私の心に入り込む。
「あと。日本に帰ってきたら仕事の相談があるんです」
「仕事の相談?」
部が違うのに?
「部の相談なら真樹か、加藤さんにしなさいよ」
私の言葉に苦笑いして
「部の相談じゃないですよ」
と言った。
「何?」
「帰ってきたらでいいです」
そう言って私の身体を舐めるようになでまわす。
「好きです」
「・・・・」
「忘れないで。
僕はすみれさんが好きだから。抱いてるってことを」
「・・・・」
「好きです」
つぶやくように小さく聞こえたその言葉に
私は返事をしなかった―――