お花屋さん-1
桜も散る季節の夜9時頃。
リカは、いつものように駅を出て近くの駐輪場へと歩き出した。
その後ろ姿を、欲望を滲ませて見つめられてるとも知らずに…
ぽつぽつとある街灯が、リカの艶やかな肩までの黒髪を照らす。
今時珍しいセーラー服が、彼女の清楚な雰囲気を際立たせていた。
リカが自転車を停めてるのは、駅の通りから一本入った住宅街の暗い駐輪場だった。
すぐに目的の自転車のカゴに荷物を入れて出ようとすると後ろから声を掛けられた。
「ごめん。道教えてくれない?」
リカが振り返ると、そこには二十代半ば程の男が立っていた。
少し暗めの茶髪、カジュアルなシャツにデニム姿 清潔感を漂わせた男は、いわゆる好青年に見え携帯片手に眉尻を下げていた。
リカは、その容姿から変態やナンパ目的の輩に声を掛けられる事も多く一瞬は警戒したものの目の前の好青年は本当に困ってるように見えて表情を和らげた。